誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

不整脈:上室性頻脈(SVT) 総論について  〜基本43〜

<スポンサーリンク>

今回から上室性頻脈にいきたいと思います。上室性頻脈は心室より上、つまり心房や房室結節で起こる不整脈の事を指しています。みなさんが、ATとかJETとかAFLとか言っているのは全部上室性頻脈(SVT)です。ここが不整脈でもかなり大事なところなのですが、苦手意識を持っている人がかなり多いかと思い、ここをどう簡単に説明するか、わりと気合を入れて書きました。うちの病院でも2回ほど看護師さん向けに講義し、ローテートしてくる小児科の先生達にも数回同じ話をしました。その内容を掲載していきますので、講義でわからなかった人や聞けなかった人もこれを読んでもらえたら大丈夫かと思います。しかし、なかなかこれ以上簡単に話をすることができないので、コレが僕の限界かと思います。これでもわからなければ、自分の病院の先生に聞いてみましょう。今回はまず、上室性頻脈の総論的なところを簡単に話していきますので、頑張って理解していきましょう。

 

f:id:inishi:20201201172117j:plain

図:不整脈の大枠(図のここの話をします)

 

上室性頻拍(SVT)の分類

上室性頻脈は心室より上、つまり心房や房室結節から出る頻脈の事を指しています。よく皆さんが見るATとかAFL、JETとかがこれに当たります。実はこの上室性頻脈も3つの機序に分けられます。機序を理解することは上室性頻脈を理解する上で非常に大事なので、これをしっかり理解できるように説明していきますね。まず3つの機序ですが、

1つ目はリエントリー

2つ目は異常自動能

3つ目はトリガードアクティビティです。

一応3つに分けるのがメジャーなところではあるのですが、トリガードアクティビティは難しいし、僕もよくわからないので、無視しましょう。僕もみなさんもスワヒリ語の如く不整脈がわからないので、トリガードアクティビティは専門家にまかせておきましょう。(どうしても知りたい人は不整脈の専門家に質問しましょう。)QT延長症候群のtorsade de pointes(TdP)とかはこのトリガードアクティビティが機序だったりします。が、わからなくてもいいです。機序が重要なのは、前者の2つです。とりあえず、リエントリー、異常自動能、この2つの機序をしっかりおさえておけば、考え方として十分ではないかな、と思います。ということで、トリガードアクティビティはとりあえず捨ててリエントリーと異常自動能について話をしていきます。この違いはしっかり認識しないと、上室性頻脈はわからないと思うので、絶対わかるように頑張りましょう。

 

f:id:inishi:20201201172139j:plain

図:上室性頻拍(SVT)の分類の表

みなさんの上室性頻脈のイメージはどんな感じでしょうか?なんか脈が早くて、DCで止めるやつ、薬で止めたりもするけど、あ、なんかATPとかも使ったりするけど、なんでそういう治療をするのかはよくわからない、みたいなイメージではないでしょうか?その気持は非常によくわかります。が、この機序を理解するとよくわからなかった上室性不整脈(SVT)は明確にわかるようになります。ということで、まずこの表を見ながら違いを認識していきましょう。まずはざっとこの表を見てください。リエントリーと異常自動能の2つの分類があります。重要な所は赤い文字にしているところです。リエントリーは頻脈中の心拍数が一定ですが、異常自動能は頻脈中の心拍数が変動します。例えば上室性頻脈(SVT)でHR 200の頻脈になったとして、寝てても泣いてもしばらくしても鎮静しても、心拍数が常にHR 200であればリエントリーです。逆にHR 200の上室性頻脈(SVT)が起こったとして、しばらくするとHR 180になったり、鎮静して寝かせるとHR 170の頻脈に変わったり、泣くとHR 220と上昇したりする場合にはそのSVTは異常自動能です。このように頻脈中の心拍数の変化はとても大事な事で、これである程度リエントリーなのか、異常自動能なのか判別することができます。もちろんそんな時間的な余裕がない場合もありますが、多くの上室性頻拍(SVT)は少し余裕があるので、判断する時間は少しあることが多いかな、とは思います。(もちろん血圧が下がって急がないといけない場合もありますので注意です!)看護師さんも治療までの間に何を見るべきかと言うと、一つは頻脈中の心拍数です。頻脈中の心拍数が一定なのか、変動するのかは診断に大きな影響を与えます。上室性頻脈だけど、なんなのかがよくわからない場合はこういう情報がすごく役に立ちます。もし頻脈中の心拍数が一定ならばリエントリーですし、変動していれば異常自動能です。まずは、頻脈中の心拍数に注目し、一定か、変動しているか、を認識してリエントリーか異常自動能かを判別するようにしましょう。

リエントリーか異常自動能かは治療方針にも大きな影響を与えます。リエントリーならば、治療にはATPDC(除細動)になります。もし異常自動能ならばDCは効果ありませんので、鎮静や薬剤などを使用して止めないといけません。不整脈ならなんでもDCだと思っている人もいるかもしれませんが、違いますからね、異常自動能にはDCが効きません。これは非常に重要なので、しっかり覚えておきましょう。リエントリーではDCが効果的、異常自動能にはDCは効かないです。

ということで、まずはじめに、リエントリーと異常自動能の特徴の違いをまず捉えましょう。

・リエントリー:頻脈中の心拍数が一定。DCが効く。

・異常自動能:頻脈中の心拍数が変動。DCは効かない。

まずはこれだけ頭にいれておきましょう。リエントリーがなんなのか?異常自動能がなんなのかは今後説明していきますので安心しましょう。まずこの2つの違いだけ頭にいれておいてから先に進んでもらうと少しわかりやすいと思います。ということで、次回はまずリエントリーから話をしていきます。