誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

不整脈:心室性期外収縮(PVC)について  〜基本42〜

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前回はPACをしたので、今回はその親戚みたいなPVC(心室期外収縮:premature ventricular contraction)について話をしていきます。PVCは最もよく見る不整脈の一つです。健診とかでも結構引っかかってくる不整脈ですね。PVCは普段の脈と関係ないタイミングで心室の心筋が勝手に興奮して、興奮が心室全体に伝わります普通の心室の心筋細胞を通して伝導するため、刺激伝導系には乗りません。そのため、QRS波はwide QRSになります。これがPVCの特徴になります。またPACと違い、心房は関係ないので、wide QRS波に先行するP波とかはありません。PACの変行伝導と間違いやすいですが、先行するP波がないのがPVCです。もちろんwide QRS波なので、収縮能としてはイマイチです。そのため、PVCが出た時にAlineとかを見ていると血圧が少し下がるのがわかります。

 

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図:PVCの図

PVCは無症状の事が多く、多くは問題になりません。治療が必要になることも少ないかと思います。しかし、重要なのは問題になるPVCです。問題があるPVCと問題ないPVC、これをしっかりわける事がPVCでは重要ではないかと考えています。ではどんなPVCが問題なくて、どんなPVCが問題になるのでしょうか。上の図に箇条書きで書いてます。

まず問題にならない大丈夫なPVCは

・単発で終わるPVC(連発しない)

・全体の数が少ないPVC(全心拍の数%の時)

・運動すると消失するもの

こういう特徴を備えたPVCはまず問題になる可能性は低いです。下に心電図の例をのせます、よくこういった形になる事が多いです。

 

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図:PVCの例

健診とかで見られるPVCは大半がこういったものです。経過観察だけでいいかな、と思います。知っておいてほしいのは、問題になる、大丈夫じゃないPVCです。大丈夫じゃないPVCは

・連発するPVC

・全心拍の30%以上あるPVC(数が多い)

・運動するとPVCが増加するもの

・いろんな形のPVCが混ざるもの

こういったPVCは注意が必要です。すぐに治療が必要になるものもあります。なので、看護師さんがこういうPVCを見た場合は報告する方がいいと思います。電気的に不安定になっていて、VTとかにつながる例とかもあります。下の心電図は、左はAblationの治療をした例、右はVT(多形性心室頻拍)になった例です。QT延長症候群とかで見られるやつですね。こういうVTになる前に上、下のPVCのがちょこちょことでているのです、これはVTになる前兆です。こういうPVCはかなりヤバいので速攻で対処が必要です。

 

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図:PVCやばいやつの心電図

PVCと言えども、甘く見てはいけないですね。重要なのは大丈夫なPVCなのか、大丈夫じゃないPVCなのかの判別です。大丈夫じゃないやつならば、なんらかの対応が必要になります。PACもPVCもATやVTの前兆の時があるので、問題ないやつが多いですが、大丈夫かどうか、しっかり見極めてください。

 

まとめ

短い記事になりましたが、今回はPVCの話をしました。PVCは多くは問題ない場合が多く、単発で数が少なく、運動で消失するものは問題がないです。重要なのは問題がある、大丈夫じゃないPVCです。PVCが連発するもの、全心拍の30%以上のPVC、いろんな方向のPVC、運動で増加するPVCなどは要注意です。こういうPVCでは対処が必要になることが多いので注意しましょう。

ということで次回は上室性頻脈(SVT)にいきます。不整脈でもかなり重要なSVT、出来る限り簡単に話していこうと思うので頑張って理解してください。教科書を読んで挫折した人もおそらくわかってもらえるかと思います。