誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

不整脈:抗不整脈薬について めちゃくちゃ簡単に解説 基本49〜

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かなり久しぶりです。DORVの話をしていましたが、なかなか進まなくてすみません。また必ず続きも記載しますので、今回はちょっと簡単な話をさせてください。前、不整脈の勉強会(なぜか不整脈の勉強会をよく頼まれます)をしたのですが、そこで少し話をした内容を書いていこうと思います。不整脈の治療について異常自動能のところで話をしました。よかったら、下の記事をまず参考にしてもらったらいいかな、と思います。

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でもこの記事では抗不整脈薬については全然話をしていませんでした。みなさん、抗不整脈薬についておそらく知りたい人多いのではないかな、と思います。そこで、今回は抗不整脈薬について話をしていこうと思います。申し訳ありませんが、僕は不整脈の専門家ではないので、解説できる薬剤が本当に少ししかありません。そして、現在いる病院でよく使っている薬剤を中心に解説していきますので、もしかしたらみなさんの病院で使っている薬と少し違うかもしれませんが、そこはご了承ください。

 

よく使う抗不整脈薬は何?

みなさん、Vaughan-Williams(ヴォーン・ウィリアムズ)分類とかSicllian Gambit(シシリアンガンビット)分類とか聞いたことありませんか?下の図に乗せている、たくさん薬剤が載っている表です。これにはたくさんの抗不整脈薬が載っています。実はよくできている表なんですが、僕ら不整脈の素人にとってはアレルギーを起こさせる忌むべき表でしかありません。なので、不整脈得意だよ、って人以外はこの表見なくていいので、忘れてください。

 

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図:Vaughan-Williams分類

じゃ、みなさんの記憶ベースでいいので、よく使う抗不整脈薬を挙げていきましょう。おそらくみなさん一番に思い浮かべるのがアミオダロン(アンカロン®)ですね。とにかくなんの不整脈でも効く、みたなイメージの最強の抗不整脈薬ですね。これは特にICUとかに勤務している人であれば必ず使ったことのある薬剤だと思いますアミオダロン(アンカロン®)はKチャネルブロッカーだっていうの、聞いたことありますか?おそらく大多数の人が意味はわからなくても一度くらい聞いたことあるか思います、そうアミオダロン(アンカロン®)はKチャネルに効くお薬なんです。今はわからなくても後でわかるようにしますので、流していきましょう。

その他にはタンボコール®って聞いたことありますか?おそらく商品名の方がよく効くお薬だと思いますが、フレカイニド(タンボコール®)っていう一般名のお薬です。これもよくSVT(上室性頻脈)の時に使いますよね。このフレカイニド(タンボコール®)ってお薬はNaチャネルブロッカーです。これもなんとなく聞いたことありますよね。静注でも内服でも比較的よく使うお薬だと思います。

その他には救急外来とかで不整脈を見る人は絶対これ使ってますね、そう、ATP(アデノシン®とかアデホス®)です。なんか投与の仕方が特殊で、「急いで入れないといけない」あれです。心電図流しながらいつも投与するATP(アデノシン®とかアデホス®)です。これは一時的に房室ブロックを起こす薬剤でしたね。

うちの病院ではあまり使いませんが、前いた病院では不整脈はなんでもかんでもプロプラノロール(インデラル®)を使っていた印象がありました。これはみなさんよく知っているβblockerのお薬ですね。他には何があるでしょう?ソタロール(ソタコール®)という内服しかないKチャネルブロッカーのお薬も聞いたことある人いるんではないでしょうか?あと大人を経験していたら、ベラパミル(ワソラン®)を不整脈の時に使った記憶が強く、とりあえず不整脈はワソラン、みたいなイメージないでしょうかね?ちなみにベラパミル(ワソラン®)はCaチャネルブロッカーでしたね。

他にもあるかもしれませんが、ぶっちゃけ抗不整脈薬はアミオダロン(アンカロン®)、フレカイニド(タンボコール®)、ATP(アデノシン®とかアデホス®)、βblockerのイメージではないでしょうか?この中でもβblockerは交感神経に効果があり、脈を抑えるイメージがあるのでなんとなく理解しやすいですし、ATPは一時的な房室ブロックを作るってだけ覚えておけばいいのでそんなに理解に苦しくありませんが、問題なのは何々チャネルブロッカーってやつですよね。このチャネルってやつが意味不明過ぎて、みなさん挫折されることが多いのではないでしょうか。

 

不整脈薬の基礎知識について

まず抗不整脈薬の話をする前にどうしても少しだけ知っておいてもらいたい事があります。それはNaチャネルとか何々チャネルとか…あの話です。このグラフは細胞の活動電位を表したグラフです。一応なんと呼べばよくわからなかったので「活動電位のグラフ」というようにしようかと思います。あと、ここで話す事はすべて正しいわけではありません。本当のところはもっと複雑なのでここに書いてあるように説明しているところはあまりないと思います。でも、なるべくわかりやすくするため、ちょっと本当のところと違う説明もしているかと思いますのでそこはご了承ください。 

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図:

まず、上の図、活動電位のグラフを見てみましょう。みなさん、誰しもが勉強してみよう、と思って上の図を見てあきらめた記憶がありませんか?僕も同じなので気持ちはよくわかります。でも少しだけこの話を理解する事で不整脈のお薬の理解はだいぶ進むので、今回説明することだけでいいので、頭にいれるようにしましょう。

まず、2つの活動電位のグラフの図があります。このグラフ、線が上に上がると細胞が興奮し、電気が発生し、心筋が収縮します。左側の図は洞結節・房室結節の電気の動きで、右側の図は普通の心筋細胞、つまり心房や心室の心筋の電気の動きになります。重要なのは2つのグラフの違いになります。左側の洞結節、房室結節の活動電位のグラフにはCaチャネルとKチャネルがついています。つまり洞結節や房室結節で電気の興奮に関わっているのはCaチャネルとKチャネルの2つになります。一方、普通の心房や心室の心筋にはNaチャネルとCaチャネルとKチャネルの3つが関わってきます。普通の心房や心室の心筋には洞結節や房室結節にはない、Naチャネルっていうのが関係してくるのです。洞結節・房室結節にはK、Caチャネルの2つだけですが、普通の心房・心室の心筋はNa、K、Caチャネルの3つなのです。Naチャネルがあるのは普通の心房・心室の心筋だけなのです。そのため、フレカイニド(タンボコール®)に代表されるNaチャネルブロッカーという薬剤を使用する場合、心房や心室の心筋には効果があるのですが、洞結節や房室結節には効果がないことがわかります。また逆にKチャネルやCaチャネルは洞結節・房室結節、心房や心室の心筋全部にありますので、Kチャネルブロッカーのアミオダロン(アンカロン®)はどんなところから不整脈が出ても効果を認めることになります。アミオダロンってなんの不整脈にでも効く理由が少し理解できましたか?まとめると

・普通の心筋細胞にはNaチャネルがあるけど、洞結節や房室結節はCaとKチャネルしかない!

 ⇢Naチャネルブロッカーは心房や心室の心筋に効く。

⇢房室結節や洞結節にはNaチャネルブロッカー(タンボコール®など)は効かない!

⇢どの細胞にもKチャネルブロッカー(アンカロン®など)は効く!

という感じになります。これがわかるだけでも、少し「チャネルブロッカー」という言葉が少しだけ身近に感じますよね。

じゃあ、NaチャネルブロッカーやKチャネルブロッカーを使うと、どんな感じになるのでしょうか?活動電位のグラフと心電図を照らし合わせながら考えていきましょう。

 

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図:NaチャネルブロッカーやKチャネルブロッカーの作用

上の図を見ながら考えていきましょう。まずNaチャネルブロッカーですが、Naチャネルというのは普通の心筋細胞(心房や心室)の電気が上昇する部分に関係があります。ここをブロックするお薬なので、Naチャネルブロッカーを使用するとこの電気が上昇する部分の立ち上がりが悪くなります。図の黄色い線のようになっていきます。心電図ではどうなるかと言うと、この立ち上がりのところは心電図で言うとQRSのところと一致するので、立ち上がりが悪くなると、QRSの幅も幅が広くなっていきます。つまり、Naチャネルブロッカーを使うと、QRS幅がwideになっていくんですね。抗不整脈薬は心機能を低下させる作用がある、というのを聞いたことがあるかと思いますが(これを専門用語で陰性変力作用といいます、忘れてもいいです。)、まさにこれがそれにあたります。Naチャネルブロッカーを使うと電気の立ち上がりが悪くなり、立ち上がるまでに時間がかかるため、心電図で言うとQRS波がwideになります。ひどいと図のような心電図になったりすることがあります。まるでVTとかのようですが、これはタンボコール®を大量に投与していた症例の心電図です。こんな感じでwide QRSになり心機能が落ちることがあります。このように、フレカイニド(タンボコール®)を投与する時には心機能に気をつけないといけないのは、Naチャネルをブロックすることにより、wide QRSになるため、心収縮能が低下するためなのです。心機能が悪い症例に使う時には特に注意が必要になります。Naチャネルブロッカーと心機能の関係は、覚えればそれでもいいのですが、少しチャネルの事や活動電位のグラフがわかると理解しやすくなりますよね。なので、ちょっと頭に入れておくと抗不整脈薬がわかりやすくなると思います。

ではKチャネルはどうでしょう?Kチャネルは図のように活動電位のグラフの後ろの方に効果があります。先程話したように洞結節・房室結節にも心房・心室の心筋細胞にもKチャネルがありますが、今回は心臓の大多数を占める、普通の心房・心室の心筋細胞で考えていきましょう。Kチャネルブロッカーを投与すると図のように、活動電位のグラフの後ろの方に効いてきます。すると電位が下がるのがゆっくりになります。図を見てもわかるようにここはT波のところと関連しているところなので、心電図ではT波の終わりが延びます。つまりQT時間が延長することになります。アンカロンを使用する時によく「QTが延長するから気をつけろ」と言うのを聞いたことがあるかと思いますが、まさにKチャネルをブロックすると電位が下がるのがゆっくりになるためQTが延長した形になります。QTが延長するとVTやVFを誘発する可能性が増えますので、不整脈の治療をしている筈が新たな不整脈を誘発している事になってしまいます。アンカロンなどのKチャネルブロッカーを投与する際にはQT延長に注意しなければいけませんが、Kチャネルが活動電位のグラフのどの部分に関与するかがわかれば、副作用のQT延長もただの単純暗記ではなく、理論だって考える事ができますね。まとめると、

・NaチャネルはQRS幅に関係する。

   ⇢Naチャネルを阻害するとwide QRSになり収縮能低下

・KチャネルはQTに関係する。

   ⇢Kチャネルを阻害するとQTが延長し、VT/VFを誘発する可能性が上がる。

どうでしょうか?少しこの活動電位のグラフにも親近感が湧きましたか?これ以上知らなくても全然困らないので、ほんの少しだけ頭にいれておきましょう。まず洞結節と房室結節にはNaチャネルがないこと、そのため、Naチャネルブロッカーは洞結節や房室結節には効かず心房や心室に作用すること、Kチャネルブロッカーはどの細胞にも効くことのでどんな不整脈にも作用する事、またNaチャネルブロッカーはQRS幅に影響し収縮能が低下すること、KチャネルブロッカーはQT延長を招きVT/VFを誘発する可能性があること、などです。これくらいでいいので活動電位のグラフと紐付けて考えることができれば、非常に抗不整脈薬が理解しやすくなるのでちょっと頭のスミに入れるようにしましょう。

 

具体的な抗不整脈薬について

先程もだいぶ書いてしまいましたが、小児に使う抗不整脈薬は限られています。いくつか簡単に書いていきますので、参考にしてください。あえて使用量とか書きますが、異論もあると思いますので、それぞれの施設でどれくらい使用しているか確認してくださいね。

フレカイニド(タンボコール®)

Naチャネルブロッカーで小児でよく使う薬剤です。Naチャネルブロッカーの中では心房に効くやつや心室に効くやつがありますが、これは心房に効くものです。静注でも内服でも使用でき、非常によく使用している薬剤のひとつです。しかし注意点としてはNaチャネルブロッカーのため、収縮能が落ちてしまいます。大量に使用するとQRS幅が明らかに変化します。収縮能がいい患児には比較的使いやすいですが、収縮能が悪い場合にはちょっと注意しないといけません。また内服はミルクとの飲み合わせが悪いため、ミルクとミルクの間に内服してもらっています、ちょっとどころではなく面倒です。他の病院もそうしているのでしょうか?よくわかりません。静注で使用する場合は1mg/kg/doseを10分くらいで投与して反応を見ています。長期的に残るものでもないので、とりあえず効果があるか試すには結構いいです。内服は3-5mg/kg/day分2-3くらいで投与して血中濃度が高くなりすぎないかどうかだけチェックしています。SVTの不整脈の予防として特によく使用しており、ソタロール(下の方ででてきます。)とフレカイニドの両方を内服してあげると、比較的、多くのSVTを予防することができるので、困ったときには両方を内服させたりしています。

アミオダロン(アンカロン®)

Kチャネルブロッカー。みなさんよく知っているはずです。言い方は悪いですが、なんか不整脈が起こってとりあえず困った時にはアミオダロンを投与しておけばなんとかなる、みたいな薬剤です。Kチャネルブロッカーなので、説明したように房室結節や洞結節、心房や心室、どこにでも効果を発揮するのがアミオダロンです。JETでも、心房性頻拍(SVT)でも、心室頻拍でも、なんにでも良く効きます。ただし投与方法が若干面倒で効いてくるまでに少しかかります。まず点滴で5-10mg/kg/doseを1時間くらいかけてローディングし、血中濃度を上昇させます。その後は5-15mg/kg/dayくらいで持続投与してキープしていきます。大体これに近いようなやり方で投与しているのではないかな、と思います。アミオダロンで使用する時の注意点はQT延長です。Kチャネルのところで説明しましたが、QTが延長し、VT/VFを誘発する可能性があるので、心電図をチェックしていく必要があります。また術後の一時的な不整脈を止めたりするのには非常にいいのですが(そのため、特にICU等の集中治療室でよく使われていると思います。)、長期で使うとなると最悪です。それでもどうしてもアミオダロンでないと予防できない場合にはしょうがなく内服で長期使用をします。しかし、アミオダロンは肺線維症をはじめとして甲状腺機能障害や角膜色素沈着など半分に近いくらい副作用を認めます。肺の合併症は悲惨でマジで命に関わります。非常に痛い目にあったことがあるので、長期間内服で使うのだけは本当に避けたいお薬です。どんな不整脈にもよく効くという大きめメリットを持っている反面、半端ない副作用という大きなデメリットがある、いわば諸刃の剣的な側面も持つような抗不整脈薬、アミオダロンですが、間違いなくよく使用するのでしっかり知っておく必要がありますね。

ソタロール(ソタコール®)

これもKチャネルブロッカーです。アミオダロンと同じですが、いくつか大きな違いがあります。まず1つ目は、ソタロールはKチャネルブロッカーですが、βblockerの作用も持ち合わせています。そして2つ目にソタロールはアミオダロンのようにいろんな副作用がありません。そのため、アミオダロンと比べたら心理的ストレスは少ない薬剤です。そして3つ目は大きな欠点になります。それは、ソタロールが内服薬しかないことです。内服だけだと効果が薄い上に投与して効果を発揮するのに時間もかかります。そのため、予防薬として投与は有効ですが、あまり発作時の治療薬という感じの使い方はできないかな、という印象です。ちなみに海外では静注薬あるみたいですけどね。実際の所、ソタロールは予防薬としては割とよく使用しています、ソタロールとフレカイニドは外来で内服処方を出している事が多いです。量は60mg/m2で開始し、90mg/m2で投与する、というやり方でやっています。ただし体表面積が計算しにくいので、mg/kgで計算して投与している人も多いかもしれません。そちらは実際に使ってない量計算なので本とか見てみてください。

ATP(アデノシン®、アデホス®)

ATPは救急外来に勤務している人にはとても馴染み深いお薬ですね。ATPは房室ブロックを一時的に作るお薬です。これはなんやかんやで房室結節のCaチャネルに作用してブロックするお薬です。すると房室ブロックになります。しかし、活性を失うのが非常に早く、数秒でもとに戻ってしまい、結局ATPの房室ブロックは一時的なものになるということです。一時的なものなので、危険性はそこまで高くはありません。ATPはAVRT、AVNRTなどの房室結節を含んだリエントリー回路を持つ不整脈が起こった場合に効果を発揮します。またIARTなどの心房内でのリエントリーであっても、一時的な房室ブロックを作ることで、P波が見やすくなり診断に繋がりやすくなります。なので、よくわからないリエントリーっぽい不整脈が出ていれば、とりあえずATP打ってみようか、ってなること結構多いです。P波って実際のところはかなりわかりにくい場合が多いですからね。投与の仕方は原液を0.1mg/kgとって、後押しの生理食塩水も用意します。すぐ失活するので、投与の仕方は大事です。心電図を流しっぱなしにし、合図とともに、全力でivして、すぐに後押しの生食も10mlくらいビュッと入れます。するとすぐに房室ブロックになり、QRS波の間隔が長くなります、AVRTとかだったら、ぷっつり不整脈が切れたりします。あまり効果なければ0.2mg/kg、0.3mg/kgを試してみます。診断がついたり、AVRTなどが切れればそれで終了です。IARTとわかればDCでIARTを治療します。そんな感じで使用します。

βblocker(ランジオロール(オノアクト®、)プロプラノロール(インデラル®) etc…)

βblockerはわざわざ説明しなくてもわかりますよね。NaチャネルとかKチャネルとかではなく、交感神経に作用する薬剤です。交感神経は心房や心室の心筋よりも洞結節や房室結節により効果がありますので、脈がゆっくりになったりします。なので、異常自動能などの不整脈を完全に治療できなくても、とりあえず心拍数を少し落としたい(レートコントロール)みたいな方法で使用する事が多いかな、と思います

例えば、ICUとかでは制御できないJETに対してランジオロール(オノアクト®)を0.2-1μg/kg/minくらいで投与してレートコントロールするのに使用したりします。ちょっと本で書いてあるより少なめではじめたらいいです。ランジオロールは短時間作用型のβblockerなので、すぐ効果を発揮し、やめればすぐに効果がなくなります。なので増量すればすぐに効きますし、イマイチならすぐやめればいいので、ICUなどでは非常に使いやすいと言えます。

その他にはプロプラノロール(インデラル®)もよく使います。AVRTみたいなリエントリーでも、プロプラノロールを静注で試すと、ポッとなくなったりして治療できたこともあります。おそらくβblockerの作用により房室伝導を抑えることによって、リエントリー周期がくるい、リエントリーが切れたりするのだと思います。なので、血行動態に余裕がありDCとかしたくないけど、どうしよう、、、みたいな時に静注(インデラル® 0.1mg/kgを10分くらいで投与)で試してみたりすることもします。全然レートコントロールの使用ではないですが。。。オノアクトは静注のみですが、インデラルは内服もありますので、内服で1-3mg/kg/day分3くらいで投与することもできますので、便利です。やはり静注、内服、両方ある薬は使いやすいですね。

副作用で注意しないといけないのは、収縮力低下、低血糖、うつとかです心不全治療としてβblockerのカルベジロール(アーチスト®)(不整脈関係ないですが、0.03-0.05mg/kg/day分2から開始して徐々に増量、0.2mg/kg/dayで維持する。心臓を休ませることにより心機能を回復させる薬)を非常によく使用していると思いますが、低血糖などはよく見られる副作用なので、注意しておきましょう。例えば胃腸炎で食事ができないのに内服だけして低血糖になったり、というような事例はよくあるので気をつけておきましょう。

ベラパミル(ワソラン®)

大人ではよく使いますが、子供では基本禁忌なのがこのベラパミルです。あまり知らなくていい人はもうそれだけ覚えておいてください。でももうちょっと知りたい人はここから先も読んでみましょう。

ワソランは大人で良く使うCaチャネルブロッカー(Ca拮抗薬の方が言いやすいのでそういいますね)のお薬です。Caチャネルっていうのは上の活動電位のグラフで説明しませんでしたが、ちょっと説明すると普通の心房や心室の細胞では上の線がまっすぐ横に延びているところに書いてあります。この時心房や心室ではどうなっているかと言うと、ちょうど心筋が収縮している時間帯にあたります。なので、Caはどちらかというと心筋の収縮に関係しています。じゃあ、洞結節や房室結節ではどうかと言うと、活動電位が上に上がるところでCaチャネルが関係してきます、普通の心房や心室の心筋で言うところのNaチャネルのところにあたります。なので、洞結節や房室結節ではCaは活動電位に大きく関与しています。結論を言うと、普通の心房・心室では心筋の収縮に影響し、洞結節や房室結節では細胞の興奮に影響します。通常の大人であれば、ベラパミルを使用すると房室結節のCaチャネルをブロックし、房室伝導を抑制することにより不整脈を抑えます。なのでAVRTとかはワソランで止まったりしたりします。しかし、小児では心筋(心房や心室)がCa代謝なので、Ca拮抗薬を使用すると心筋の収縮能が落ちてしまいます。逆にカルチコールとかを入れると心臓が元気になるのは心筋がCa代謝だから、Caを単純に増やしてあげると心機能が上がるからです。ちょっと話がそれましたが、こういった理由で小児では基本Ca拮抗薬は禁忌なので使用しないことが多いです。もちろん、中学生とか高校生であれば使っても大丈夫だとは思いますが、小児循環器を専門にしている場合はそれでも気持ち悪いので使用しないケースが多いかな、と思います。そもそも使用しないので、使い慣れてないのもあるし。

ということで、個人的によく使用すると思われる抗不整脈薬を適当に並べてみました。βblockerに関してはもっともっとあると思いますが、勘弁してください。今回の記事でみなさんにわかって欲しかったのは「〇〇チャネルブロッカー」的なやつです。また今回は使用量とかもあえて記載しましたが、これは参考程度にしといてください。

こう考えるとあまりたくさんの抗不整脈薬を使うわけじゃないので、ちょっと抗不整脈薬のハードルが下がったのではないでしょうか?そうだといいかな、と思いますが、こんなにたくさん無理!って人はフレカイニドとアミオダロンだけ活動電位と絡めてしっかり覚えてもらい、あとはATPは一時的な房室ブロック、ソタロールは内服だけしかない副作用の少ないKチャネルブロッカーとだけ覚えておきましょう

 

まとめ

小児で使用される抗不整脈薬はあまり多くありません。Naチャネルブロッカーのフレカイニド(タンボコール®)、Kチャネルブロッカーのアミオダロン(アンカロン®)とソタロール(ソタコール®)、ATPやプロプラノロールに代表されるβblockerとこれくらいではないでしょうか?下の図にそれぞれの抗不整脈薬の特徴を簡単に載せておきますね。

 

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図:抗不整脈

いずれにせよ、今回の記事では活動電位のグラフを少しだけでいいので、理解してほしい、という目的で記事を書きました。すべて正しいわけではないのですが、こんな感じでかんがえてもらったらわかりやすいかと思い、記事を作りました。この活動電位のグラフさえちょっとだけ理解してくれれば、心理的距離が半端なかった不整脈薬が少し身近に感じられるようになってくれるのではないでしょうか

という事で次回は何を書くかまだ決まっていませんが、DORVの書きかけの記事に戻る可能性が高いのでまた気長に待っていてください。