誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

不整脈:不応期について 上室性頻脈(SVT)の前に 〜基本40〜

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今回からまた不整脈に戻っていきます。今回からは下の図の不整脈の真ん中に当たる、上室性不整脈について話をしていきます。この話をする前に前提の知識としていくつか押さえておいてほしい話があります。それは

・刺激伝導系について

・wide QRSとnarrow QRSについて

・右脚ブロック(RBBB)と左脚ブロック(LBBB)について

・不応期について

この4つです。最初の3つは過去の記事で結構話をしていますので、その記事をみてもらいたいな、と思います。過去の記事のリンクを載せていますので、上記の内容がよくわからなければちょっと復習してほしいな、と思います。

リンク

刺激電動系について

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wideQRSとnarrowQRSについて

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 右脚ブロックと左脚ブロックについて

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どの記事も結構長いので、ちょっとしんどいと思いますが、基本は大事なので理解しておくほうがいいかと思います。上記を簡単に言うと、刺激伝導系は心臓の電気の通り道です。ココが障害されると、脈がでなくなってしまい、洞不全症候群(SSS)や房室ブロック(AVB)の原因になったりします。また、刺激伝導系は洞結節⇢房室結節⇢His束⇢左脚・右脚⇢プルキンエ線維⇢心室心筋へと電気を伝えます。ポイントは房室結節から心室の心筋までは電気を高速で伝えます一気に心室に伝導するので、心室全体に一瞬で電気が行き渡り、一気に収縮し、narrow QRSになり、良好な収縮になります刺激伝導系以外のところから電気が伝わるとノロノロ心室全体に電気が伝わるため、ゆっくり収縮しwide QRSになり、イマイチな収縮になってしまいます。(narrowとかwideはQRS波の幅の事です。)これがnarrow QRSとwide QRSの違いで、narrow QRSは刺激伝導系に乗って電気が伝わり、一瞬で心室に広がるのに対して、wide QRSは刺激伝導系じゃないところから電気が伝わり、ゆっくり心室に広がります。narrowは収縮能がよく、wideは収縮能が落ちます右脚ブロックと左脚ブロックは刺激伝導系の右脚が障害を受けた時で、左脚ブロックは左脚が障害を受けた時の伝導様式です。右脚ブロックだと左脚は正常なので、左心室には刺激伝導系を伝わり一瞬で電気が伝わりますが、右脚はやられているため、左室に一気に伝わった電気が右室にノロノロ伝わり特徴的なwide QRSの波形になります。左脚ブロックは逆に左脚がやられ、右脚が正常な場合です。心機能から考えると正常が一番いいですが、右脚ブロックと左脚ブロックを考えると左室が正常な右脚ブロックの方が良いです。左脚ブロックはあんまり良くないです。この文章を読んでピンとこない人は上記の記事を読み直してみましょう。

 

不応期について

ざっと話しましたが、ココまでの内容は以前に記事に書いたものです、よくわからなかったら上記の記事を見直してみてください。これに加えて、不整脈の前提の知識としてもう一つ話しておきたい話があります。それが不応期(英語でrefractory period?意味合い的にはblankingも不応期。)についてのお話です。心筋の細胞は電気刺激によって心筋細胞が反応して収縮します。しかし、一度興奮すると収縮するために活動をしているので、次の電気刺激がきても反応できない時間帯があります。これが不応期です。野球などに例えると、下の図のようにバッターが丁度ボールを打っている時に次の球がきてもボールを打てないのと一緒です。心筋細胞も電気刺激がきて興奮している時は次の刺激がきても反応できないのです。この時間帯を不応期と言います。同じ心筋細胞でも不応期は場所によって長さが違います。一番不応期が短いのが心房の細胞で、一番長いのは房室結節やHis束といった刺激伝導系です。なので、AF(心房細動)とかになってもHR 300とかで心房の細胞は反応できますが、房室結節は不応期が長いので、全部伝わらずに一部しか心室に伝導せずHR 300とかになったりしません。AFL(心房頻拍)とかでも一緒で心房と心室が3:1とか2:1で伝導するのは不応期の違いによるものからきています。心房は不応期が短く次の電気刺激がきても結構反応できるのですが、房室結節は不応期が長いので反応できなかったりするのです。また右脚と左脚も微妙に不応期が違います、覚えるほどの事ではありませんが、新生児や乳児期では左脚の方が右脚よりも不応期が長く、幼児期以降は右脚のほうが不応期が長くなります。さすがに右脚と左脚の不応期の長さまでは覚えなくていいですが、不応期の概念がわからないと不整脈は理解できないと思いますので、理解しておきましょう。簡単に言うと、心筋細胞は興奮している時は次の電気刺激がきても反応できない、この反応できない時間を不応期と言う、これだけです。

 

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図:不応期

*これはちょっとだけマニアックなので、知らなくていいです。ちなみに不応期にはblankingとrefractory periodの2つがあります。ちなみにblankingとrefractoryはペースメーカー用語です。blankingは盲目みたいな意味合いがあり、電気刺激が全く見えてないから反応できない、みたいな意味合いです。refractory periodは電気刺激がきている事はわかっている(見えている)けど、反応できない、みたいな状態です。野球の例ではrefractoryの方が近いかもしれません、球がきているのは見えているので・・・。ペースメーカーを扱う場合は知っておきましょう。

 

不整脈について

上記の4つの事項をおさえてもらったところで、ここからは上室性不整脈について話をしていきます。ちょうど下の図で言うと、真ん中のところにあたります。心房性期外収縮(PAC)、上室性頻脈(SVT:昔はPSVTって言ってたので前の表ではPSVTって書いたかもしれません。)とかですね。

 

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図:不整脈の図

次回は心房性期外収縮(PAC)について話をしていきましょう。え、PACって簡単じゃん、と思っているあなたは一回ちゃんとPACについて勉強したほうがいいと思います。実はPACとPVC(心室性期外)って結構間違いやすいポイントがあったりします。ので、まずPACについて話をしていきます。その次にPVCを話してから、上室性頻脈の話をしますね。