誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

小児循環器アレルギーの原因の一つ、先天性心疾患の病名について 基本17

<スポンサーリンク>

小児循環器の病名はほとんど略語です。

心室中隔欠損症って書いてくれればわかるのに「VSD」って書いてあります。

しかもそれだけでなく、病名にたくさんの略語が羅列されている・・・

もはややる気をなくすための嫌がらせ?としか感じない人も多いのではないでしょうか?

これは小児循環器アレルギーの大きな原因のひとつと言えます。

正直、覚えるしかないですし、小児循環器をやっていると

勝手に覚えてしまいます。

 

でもそんな事言われても全然救われないでしょうから

この病名について少しでもわかりやすい事を目指し話していこうと思います。

なお、すべての施設で同じように病名がつけられているとは限りません。

たまに同じ病名や同じ手技に対して違う略語を使っている時もあります。

なので、そこらへんは違っていればすみませんが、その施設にあわせてくださったらいいと思います。

ま、とは言え、大きなくくりでは全国共通なので、大きな間違いはないと思いますので安心してください。

略語については正直あまりコツなどありません。なので、担当した患者さんの病名をまず把握していく、という感じで覚えていくしかないでしょう。

一応よく使われる略語を最後に載せておきますね。

 

今日話すのは、病名の順番やルールなどについてです。これを知っていると、はるかに簡単に病名を把握しやすくなると思います。

 

病名の順番やルールについて

まず病名の順番について話します。

結論から言うと

  ・一番はじめがメインの病名。

  ・次は重要な順で続く。

  ・「s/p」や「po.」などの後は施行した手術の名前がきます。

となります。

そして最も重要なのは

  ・一番はじめの病名

  ・最終手術

この2つになります。まずはここから把握するようにしましょう!

 

<例1>

一つを例にして上げます。

   TOF, RAA, PLSVC, s/p ICR(TAP)

上記が割と簡単な例です。

略語を簡単に解説すると、TOF=Fallot四徴症、RAA=Right aortic arch(右側大動脈弓)、PLSVC(左上大静脈遺残)、ICR(心内修復術=簡単に言うと二心室修復しましたという意味)、TAPはtransannular patchの略です。

なんとなく、もう嫌だなと思ったあなたの気持ちはわかります。

ですが、もう少し頑張りましょう。

まず順番ですが、一番はじめにくる略語がメインの病名となります。

なので、一言でこの患者さんを言い表すとすると

「TOF」すなわちFallot四徴症となるわけです。

もう今回は、RAAやPLSVCは無視していただいて結構です。細かい手術の仕方が変わってくるので、循環器内科や心臓血管外科にとっては重要な事ですが、看護師さんが仕事をする上であまり重要ではないので、キャパを温存するためにここは捨てましょう。

一番はじめに最も重要な病名が来た後は、重要な順、もしくは血液が流れる順などに病名が羅列してあります。この患児の場合は大動脈弓が右側なのか、左側なのかは次に大事なので、RAAがTOFの次に来るのです。

メインの病名の認識の次に重要なのは、「s/p」「po.」などの後に続く手術名です。

どんな手術をしたかで、メインの病名が同じでも大きく血行動態が変わるからです。s/pが何個も並ぶときは最終手術(一番最後にくる手術名)をチェックするようにしましょう。

 

この患者さんの病名を大事なところだけ抜き取って簡略化すると

TOF s/p ICRです。

Fallot四徴症で心内修復術後である、ということです。これだけで、この患者さんを大まかに把握し、問題点を予測することができるのです。

長い病名もこれだけであれば、なんとかなる気がしませんか?

 

<例2>

では、もう少し難しい例でいきたいと思います。

   Riso, Dex, DORV, CAVC, valvPS, bil.SVC, s/p RtmBTshut, s/p BDG, s/p fenestrated TCPC(EC 18mm)

もはや呪文にしか見えない・・・という方もおられるかと思います。

しかし重要なところは

一番最初のRisoと最終の手術fenestrated TCPCだけです。

Risoとは右側相同という意味です。Asplenia(無脾症候群)と同じ意味と考えてください。この疾患については大事なので、いずれ各論で説明しようと思いますが、すごく簡単に説明します。

人間の体は左右非対称にできています。肝臓は右に大きく、脾臓は左のみにあります。気管の分岐の角度も左右で違いますし、心臓も同じように左右で違います。右側相同=無脾症候群では、全身の右半分が両側にあるような状態です。左側も右側にあるものがくるため、本来左側にしかない脾臓はなかったりします。これが右側相同=無脾症候群です。

 

この子の病名に戻りますと、Dex=右胸心、DORV=両大血管右室起始症、CAVC=共通房室弁、valvPS=肺動脈弁狭窄、bil.SVC=両側上大静脈です。s/pの後は手術名でRtmBTshunt=右のBTシャント手術(mはmodifiedという意味でoriginalとわけています)、BDG=両方向性グレン手術、fenestrated TCPC=開窓付きフォンタン手術の事です。いや、、、、、長いですね。

 

この子の病名に戻りますと、簡単に言うとRiso s/p fenestratedTCPCです。

肝心なところは極論これだけです。

長い病名ではありますが、簡単に言うと、

右側相同でFontan術後ということです。これが一番大事なところになります。

 

補足ですが、Dexとは右胸心という意味です。心臓が右にあるということです。レントゲンとか見ればすぐわかるかと思います。

Risoの次にくる、この病名もわかると、より理解が深まると思います。

なので、病名は全部わからなくていいので、

まず一番はじめの疾患名、最終手術がわかるようにしましょう!

それが理解できた後は、前から順番に調べていけばいいと言うことになります。

キャパが持つ限り調べて貰えればいいですが、

慣れるまではしんどいでしょうからいいです。

一番大事なのは一番はじめと最終手術だけなので、長い病名でもちょっと気楽に思えませんか?

 

もう一度まとめると

  ・一番はじめがメインの病名。

  ・次は重要な順で続く。

  ・「s/p」や「po.」などの後は手術の名前。

  ・一番はじめの病名と最終手術が一番大事。

上記のような順番で病名がついているので、

はじめの疾患名と最終手術を把握し、余裕があれば、前から順に調べていくのがいいと思います。

病名を医師に質問するのはハードルが高いですよね。

不勉強だと思われると心配になるでしょうが、案外どこにものってなかったりするんですよね。

そういう人は、こんな感じで把握してもらったらいいと思います。

 

では最後によく使われる、と思われる略語を書いておきます。

(下記画像参照)

メインの病名やサブ、手術でよく使われるものなど、わけて記載しておきます。

たくさんあるので抜けているかもしれませんがご了承ください。

 

では、次回は心エコーについて話します。

心エコーを実際にしない人に向けての話になります。

 

 

f:id:inishi:20190408220822j:plain

病名1

f:id:inishi:20190408220851j:plain

病名2

f:id:inishi:20190408220919j:plain

病名3

f:id:inishi:20190408220952j:plain

病名4

図:略語