よく心エコー教えてほしい、みたいな事言われるのですが、
ハッキリ言って自分で当てない限りはわかるようにならないかと思います。
しかし、そう言ってしまったら話ははじまらないですし、看護師さんはエコーをあてることができないでしょう。
ですから、今回はエコーをあてない人に焦点をあてて、
「とりあえずココだけ見て!」
というところについて話していきたいと思います。
心エコーと言うのは所詮心臓を評価するためのただの道具なので、
基本的に疾患の血行動態がわからない、もしくは予想できない状態であてるのはナンセンスです。
逆に言えば、心臓の状態がわかっていれば、エコーなんて正直どうでもいいのです。
基本的には
「どこどこを見たいからエコーをする」
というスタンスで僕らはエコーを診ています。
なので、エコーの所見を聞く前に、その患者さんの問題点を把握しておくようにしておくと、理解しやすいかと思います。
所見用紙には今回必要でない所見もたくさん書いてあるので、その雑多な所見の中から必要な情報を取り出せるかが重要になってきます。
ではエコーについて話していきましょう。
エコーについての最低限知っておいてほしい事を4つに絞ってみました。
それがこれです。
・動き
・逆流の程度
・狭窄の程度
・肺高血圧の推測
この4つかな、と思います。
この4つについて大体わかっていれば、エコーをやったことがない人でも、所見から大事な情報が読み取れるのではないでしょうか?
- 動きについて
心臓(具体的には主心室)の「動き」がいいか、悪いかはエコーの動画で簡単に把握する事ができます。
口でいい、とか悪い、とか言いますが(それではあまり科学的でないので)、
レポートには大体の場合は数字化して記載しています。
それにはいろんな表現方法がありますが、とりあえず2つだけ覚えましょう!
それはEFとFSです。
図:心エコー(動き)
① FS
30以上は動きがいい
20-30 は少し動きが悪い
20以下は動き悪い
② EF
60以上は動きがいい
50-60はちょっと微妙
40以下は動き悪い
上記が大体の基準になります。多くの病院ではEFをメインに使っているのではないでしょうか?僕が現在働いている病院ではエコー所見ではFSをメインにしているようです。
残念ながらあまりコツとかはないので、数字は覚えるしかありません。たいていは動きに問題ない事が多いので、EFだったら、60以上の数字がほとんどになると思います。その中で50%とか低い数字であれば、「お?なぜ動きが悪いんだ?」と思ってみる事が大事なのではないでしょうか。
- 逆流の程度
次に逆流の程度について説明していきます。逆流に関してはエコーが最も得意とする分野の一つです。
逆流の場所、程度、理由などを推測する事ができます。
ここでは逆流の程度についての表現方法を話していきます。
逆流は基本的には4つにわけて評価していいきます。
所見ではかっこよく英語で書いてあります。
図:心エコー(逆流の程度)
① trivial : ほんの少し(どうでもいいほど少し。臨床的にはないのと一緒)
② mild (slight) : 軽度(臨床的には影響しないけど、ちょっと注意)
③ moderate : 中等度 (治療適応。手術で治して、という循環器のメッセージ)
④ severe : 重度 (やばいくらい逆流。。という意味。)
上記のような分類なので、慣れるしかないかな?と思います。
教科書に乗ってない事といえばmoderateからが治療適応であり、手術でいじってください、というメッセージがあります。逆に結構逆流あるけど、手術する必要はないと考える時はmild-moderateとかいう中途半端な表記をよくしています。オフィシャルな表記ではないと思いますが。。。
- 狭窄の程度について
狭窄の程度もエコーで測定できます。
例えをあげると狭窄とはホースの口のようなものです。
ホースの口を想像してください。口を細めると、水が勢いよく出るようになりますよね?
これと同じイメージで、血管、大動脈や肺動脈に狭窄があると、
そこを通る血液の速度もはやくなります!
どのくらいの速度であれば、狭窄と考えるのでしょうか?今回は静脈系は無視して最も大事な動脈系の速度だけ覚えてください。
普通の狭窄のない大動脈、肺動脈は1-1.5m/sec程度です。まずはこれが基準です。これより早いと狭窄と考えます。
図:心エコー(狭窄)
1-1.5m/sec →普通。狭窄なし。
2-3m/sec →ちょっと狭い。様子見かな。
3-4m/sec →結構狭い!治療を考えようか。。。
4- m/sec →治療しないといけないくらい狭い!
速度で考えると上記のような感じになります。
こんなに覚えられない、という方は
「普通は1m/sec、狭窄は4m/sec」と覚えましょう。4m/sec以上は治療適応になるくらいの狭窄ということなので、エコーの重要な指標になると思います。
ところが、エコーレポートを見ていると
「AS PG 64mmHg」と書いてある事もあります。
これは違う表現ではありますが、同じ狭窄の程度を表している表現です。
これはエコーで流速を測定した時に、
4×v2で圧較差を推測できるので、その推測した圧較差を書いているのです。
なので、例えば上の例「AS PG 64mmHg」は、AV flow 4m/secであれば、圧較差は4×42=64mmHgということになり、その64mmHgを書いているということになります。
これエコーの機械が勝手に計算して出してくれますので、その値を書いているのです。
僕はこの表現方法を使わないので、あまり70mmHgとか言われてもピンときません。いつも頭の中で4で割って大体何メートルくらいかを推測します。
70mmHgだと4で割ると17くらいなので、√17は大体4より少しはやいくらいかな、と計算して考えています。
なので、基本的には「普通は1m/sec、狭窄は4m/sec」と覚え、
余裕があれば、「圧較差は4×v2mmHg」を覚えておけば、狭窄かどうかを判断する材料は十分だと思います。よくでてくる式なので、4×v2は覚えておいて損は全くないと思います!
めちゃくちゃ余談ですが、4×v2よりも(2×v)2と覚えた方がより良いです!例えば4m/secだったら、4×2=8で8の二乗って考えたほうが簡単に64という数字を割り出せると思います。圧較差70mmHgなら70は9の二乗=81と8の二乗=64の間で、64により近いので、8の二乗と考え、8÷2=4よりちょっと早いくらい、と考えればいいですよね。ほんと、どうでもいいんですけど、暗算する時はなるべく簡単にする方がいいですからね。読んでも意味わからなかったら、どうでもいいのでこの余談はすっ飛ばしてOKです。
- 肺高血圧の推測
肺高血圧の推測がエコーでは重要なポイントの一つです。
これがよくわからない場合が多いと思います。
けど長くなってしまうので、次回話していきます。