今回のところは重要です。円錐中隔(Conus septum)の前方偏位とともにTOFの核となる部分なので、頑張って理解してください。でははじめていきます。
BT shunt手術が終わり、酸素濃度が安定するとしばらく外来で平和な日々が続きます。
TOFの児の次の目標は1歳、10kくらいで心内修復術をすることです。
TOFの患児はlow flowなので、体重はよく増えますので、結構あっという間に10kgくらいになってしまいます。
今回は1歳10kg、心内修復術の話をします。
図;TOFの臨床経過
上の図のここですね。
TOFで最も大きな手術になります。心内修復術が無事終われば、SpO2が100%になりますのでチアノーゼともオサラバというわけです。
TOFの児の特徴
1歳10kgくらいになると心内修復術前のカテーテル検査のためにTOFの子が入院してきます。アメリカなどでは心内修復術前にカテーテル検査をしていないと思いますが、日本ではおそらくほとんどの施設でまだ心内修復術前に心臓カテーテル検査をしています。
入院してくるTOFの児の特徴は・・・
・太っている。
・甘やかされている。(いい意味で)
という子が多いと思います。Low flowのところでも話しましたが、肺血流が少ないのでTOFの児はよく体重が増えます。同じ年齢の他の子と比べると(特に先天性心疾患の子と比べると)ぽちゃぽちゃした印象を受けると思います。肺血流が少ないため、呼吸が楽なので、よく体重が増えるのです。
それとともに、Spellを経験している児や、BT shunt手術をしないでなんとかなっている児は、チアノーゼやSpellにならないように、ご両親が泣かさないよう、とても気を使って必死で育てているケースが多いです。なので、いい意味で甘やかされたような子が多いです。
病棟に太った1歳くらいの子がいたら、その子はTOFの児かもしれませんね!
心内修復術
図:心内修復術
カテーテル検査を終えて手術のプランが立つといよいよ心内修復術となります。具体的に何をするか、と言うと
・VSDを閉鎖する。
・肺動脈狭窄を治す。(右室流出路再建術)
この2つをしてあげれば、TOFは普通の血行動態に戻るので、チアノーゼもなくなりますし、肺動脈の狭窄もなくなります。VSDは閉鎖すればいいだけなので、特に説明する必要もないかと思いますが、右室流出路再建術は実は結構難しくもあり、TOFの予後に大きな影響を与えるキーポイントになります。
ここからは、TOFで重要となる、右室流出路再建術について話していきます。これを理解できれば、僕らが何を気にしてTOFを診ているかがわかるようになります。
右室流出路再建術(RVOTR)について
右室流出路再建術では、2つのポイントがあります。
1つ目は、肺動脈の狭窄の解除、2つ目は肺動脈弁の逆流です。
肺動脈の狭窄を解除しつつ、肺動脈の弁の逆流がないようにしなければなりません。狭窄を解除しないと右室の負担が大きく、術後右心不全になり循環が成り立ちません。また逆流があまりに多いとこれも右室の負担になり、右心不全になってしまいます。そのため、右室流出路の再建術にはいろいろな工夫やポイントがあるのです。
① 狭窄の解除について
まず肺動脈の狭窄の解除についてです。
図を見ながら考えていただければいいかなと思います。
図:右室流出路再建術(RVOTR) 狭窄解除
肺動脈の狭窄と言っても、肺動脈弁の上、肺動脈弁、肺動脈弁の下(=右室流出路)のどこが狭窄しているかで変わってきます。
まず、肺動脈弁の上であれば、図のようにパッチをつけて、径を広げる方法で解除します。ほぼこの方法で肺動脈弁の上の部分は広げて狭窄を解除しています。
次に肺動脈弁の狭窄解除については、詳しくこの後説明します。ので一旦おいといて。。。
次に、肺動脈弁の下(=右室流出路)は、円錐中隔の筋肉が前方偏位しており、大抵肥大していて、その筋肉が邪魔なので、弁の下の筋肉束を切開・切除します。でもこれだけでは狭窄が残る場合が多く、肺動脈弁の上と同様にパッチで広げて狭窄を解除しないといけない例があります。ただし、ここが重要な一つのポイントです。
以前は右室流出路(肺動脈弁の下のところ)を広げるため、大きく切開をいれてパッチで拡大していました。しかし、大きな右室切開が将来的な右心不全の原因であることがわかったのです。そのため、できるだけ、右室切開を小さくすることが、肺動脈弁の下、つまり右室流出路の狭窄解除には重要になってきます。
→ 右室切開は最小限に抑える!でないと、将来右心不全になる。
まとめると、狭窄をしっかり解除しなければ、右室の負担がとれず、右心不全になりますが、右室を切りすぎると将来右心不全になります。なので、切りすぎず、しっかり狭窄を解除するという絶妙なバランスが重要となってきます!
② 肺動脈弁の狭窄解除と肺動脈弁逆流について
次に肺動脈弁の狭窄解除および逆流について説明していきます。両方とも肺動脈弁に関わるところなので、ここで一緒に説明していきます。
図を見ながら考えていきましょう。
図:弁輪温存とTAPについて
図;弁輪温存とTAP法について
肺動脈弁の狭窄はまず、弁尖の切開を行います。でもこれには限界があります。図のように肺動脈の弁輪が小さければ、弁尖をいくら切開しても狭窄は解除されないのです。そのため、肺動脈の弁輪径が十分な大きさでなければ、しっかり狭窄を解除するため、「弁輪」を切らないといけなくなります。
弁輪と強調していますが、弁輪を切らずに狭窄を解除できれば、将来的に逆流で困ることはかなり少なくなります。弁輪を切らないで狭窄を解除することを「弁輪温存」といいますが、弁輪温存できれば、心内修復術を最後にその後一生手術せずに済むことも多いのです。
しかし、TOFの多くは肺動脈の弁輪が小さいため、弁輪を切開し、弁輪の上部にパッチ(弁をつけたパッチ)を当てて弁輪を拡大しています。これをTAP(transannular patch)法といいます。図のように、肺動脈弁の上から下にかけて切開し、パッチをつけて拡大する方法です。肺動脈の狭窄は確実に解除できるのですが、問題はどうしても肺動脈弁の逆流が残ってしまう事です。
では逆流が残らないように最初から人工弁にしておけばいいのではないか?と思われるかもしれませんが、小児は成長しますので、無理なのです。1歳で10kg、6歳で20kg、10歳で40kgくらいになってしまいます。1歳で入れた人工弁は成長しないので、すぐサイズアウトしてしまい、狭窄が来てしまいます。それに比べて、TAP法はパッチ以外の部分は自分の組織なので、成長してくれます。体が大きくなっても、体と一緒に自分の組織の下半分のところは成長しますので、弁としては、不完全で逆流がありますが、体が大きくなってもそのまま使えるのです。悪い事しか書いてないようですが、TAP法は体格がどんどん大きくなっても大丈夫な方法であり、TOFの優れた手術方法なのです。しかし、どうしてもこのTAP法ではある程度逆流が残ってしまいます。大抵はmildからmoderate程度は残ってしまいますが、仕方のないことだと思います。
この肺動脈弁の逆流のため、長年かけて右心室に負担がかかると将来的には肺動脈を人工弁にしないといけなくなります。これがTOFの大きな問題なのです。
臨床経過の図(この記事の一番上の図です。)に載っているように、TAPで右室流出路を再建した場合は早いと10歳くらいで肺動脈弁逆流のため再手術が必要になります。再手術の場合は人工弁(生体弁)で肺動脈弁を作り直します。そのため、人工弁の寿命が来たら、また再手術を施行する事になります。これは精神的にも身体的にもとても負担になります。
まとめると下記のようになります。
肺動脈弁輪径が小さいと右室流出路再建術はTAP法で施行。
↓
肺動脈弁逆流が残る。
↓
長年に渡りジワジワ右室に負担をかける。
↓
将来的に肺動脈弁置換術(人工弁にする手術)が必要。
↓
人工弁(生体弁)の寿命があり10-20年でまた再手術が必要。
↓
人工弁の再手術・・・を繰り返す・・。
その一方で、弁輪温存すれば、心内修復術を最後に一生手術をしなくていいかもしれません。かなり違う経過になることがおわかりいただけるかと思います。もちろん弁輪を切開せずに手術できればみんなHappyです。僕らもみんな弁輪温存できないか、考えながらTOFを診ています。
弁輪温存
こう言われると誰もが気になるかと思いますが、狭窄を解除しつつ、右心不全にならない最低限の弁輪の大きさはどれくらいなのでしょうか?どれくらいの大きさの弁輪径なら切開せずに済むのでしょう?
それにはいろいろな基準がありますが、まずどこの施設でも大丈夫なラインを示しますと、体格あたりの肺動脈弁輪径の正常値の80%以上の弁輪径があれば、弁輪を切開せずに手術ができます。(弁輪温存といいます。)施設毎にいろんな基準を使用していますが、「内藤の基準」なんかは有名です。僕らはカテーテル検査やエコーで弁輪温存できるかどうか、を、かなり気にしながらTOFをいつも診ているのです。
・肺動脈弁輪径が正常の80%以上あれば弁輪温存。
(弁輪を切開せずに手術できる。内藤の基準なども用いられる。)
・肺動脈弁輪径が小さければ、弁輪を切開し手術。
→TAP:transannular patch法で右室流出路を再建。
まとめ
難しくなりましたが、簡単にまとめてみます。
図もみながら復習してください。
図:TAPと弁輪温存
・心内修復術では「VSDの閉鎖+肺動脈狭窄解除」を行います。
・肺動脈狭窄解除では右心不全を防ぐため、右室切開は最小にする。
・肺動脈弁輪径が正常の80%以上なら弁輪温存できる!
・肺動脈弁輪径が小さければ、TAP法で右室流出路再建する。
・TAP法なら将来的に肺動脈弁逆流のため、再手術が必要。
というところになります。
上記を箇条書きしましたが、わからなければ、もう一度読み直すか、教科書などを読んでみてください。それでもわからなければ、医師に聞いてみてください。正直うまいこと説明できてないような気もしますが、わからなければ、申し訳ありません。
でもTOFの心内修復術について理解できれば、カテで何を診ているか、何を気にしているのか、が少しわかるかと思います。
では次回は再手術のところについて説明していきます。
コメントで図のフローチャートの「弁輪温存とTAP法が逆」という指摘がありました。間違っていたので図を訂正しています。ご指摘ありがとうございました。