誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

右心室と左心室の違いについて〜先天性心疾患における認識~ 基本16

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先天性心疾患を考える上で左心室と右心室の違いは

かなり大事です!

 

すごく簡単に言うと

「左心室はパワーが強く、右心室はパワーが弱い」

これだけです。

あまり考えたくない人はこれだけ覚えていただいてもいいくらいです。

 

もともと右心室は肺動脈に、左心室は大動脈に繋がります。

心室は肺にさえ血液を送ればいいため、血圧は20-30mmHgあればいいのですが、左心室は全身に血液を送らないといけないため、血圧100mmHg必要です。

そのため、右心室潜在的なパワーは低いものになります。

一方左心室はパワーがかなり出せる心室となります。

 

Fontan手術を考えた時に、心室がどちらの形態をしているかが、予後に大きく関わってきます。

心室が左心室の形の心室であれば、パワーがかなり出せますので、心室として十分力を発揮し、へこたれる心配は少ないでしょう

しかし、1つしかない心室が右心室の形態であれば、どうでしょうか?本当だったら20-30mmHgの血圧を出せばいいところ、100mmHgの血圧を出さなければいけません。正直右心室にとっては、キャパ超えです。

容易に想像できると思いますが、パワー不足で困る事が多いです。もともとパワーを出せる心室ではありませんので、収縮力不足になり、心不全になります

(絶対ではありませんが、心不全になりやすいです。)

 

同じFontanでも主心室が左心室か、右心室かで予後がかなり変わります

心室が右心室の代表的な疾患で言えば、

左心低形成症候群や右側相同(無脾症候群)などは予後が悪いです。

いろいろな要素がありますが、主心室が右心室だからと言うのも重要なポイントであり、収縮力が落ちやすく心不全になりやすいです。

逆に肺動脈閉鎖などは主心室が左心室であり、ほとんどはよいFontanになり予後もいいです。

 

なのでFontanの人を見た時は

「主心室はどちらなのか?」

を常に意識して見る必要があります。

わからなければ、診断をつけなければなりません。が、これは小児循環器の仕事なので、どっちなのか聞いてみるといいでしょう。

下記の図にその特徴を載せておきます。

 

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心室と左心室の違い

図:右心室と左心室の違い

 

判断の仕方としてはいくつかありますが、

  ・右心室は内腔がゴツゴツした筋肉で、形は三角形。

  ・左心室は内腔がサラッとした筋肉で、形はラグビーボール

もうこれだけでいいので、覚えてください。イメージとしては

「右室はゴツゴツしているので、右室はパワーロスしやすい、左室はサラッとしていて、ラグビーボールのような形なので、血液を絞り出しやすい」

くらいでいいかなと思います。

 

はじめの方で、心臓の絵を書こう、という話をしたと思いますが(下記リンク)

 https://inishi.hatenablog.com/entry/2019/02/11/105455

絵で右心室はわざと波々とした筋肉で描いています。

「これは右心室ですよ」、「筋肉はゴツゴツしてますよ」

と、アピールしているのです。

絵をこのように描く癖をつけておけば、おのずと右心室はゴツゴツしている、と覚えれますし、それにリンクして収縮能はイマイチと考えることができるのではないかと思います。

 

まとめると

・右心室はパワー不足で、心不全になりやすい。

・主心室が右室のFontanは悪い。

・右心室は三角形でゴツゴツしている。

こんな感じです。

心室については先天性心疾患では大事な箇所になるので、意識しておく必要があると思います。

少なくとも、Fontanや単心室の患者さんを診たときは

「右心系単心室か?左心系か?」

と疑問を持ってもらえるようならOKだと思います。

 

次回は小児循環器アレルギーの大きな原因の一つとも言える、

病名について話していきます。

病名の略語も嫌だな〜と思わせる大きな原因ですよね。。