誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

ファロー四徴症( TOF: tetralogy of Fallot ) カテーテルによる肺動脈弁置換術+α~ 疾患11

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今回はカテーテルによる肺動脈弁置換術について話をしていきます。

これはまだ日本で導入されていません(アメリカでは認可されたので、いずれできるようになると思いますが。)

なので、将来的な話という事になりますが、興味ある人は読んでいただけたらと思います。

 

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図:TOFの将来は・・・

 

前回話した、肺動脈弁置換術は10-20年毎に手術をしないといけない、という話でしたが、これを一回でもカテーテル治療でできればいいと思いませんか?

カテーテル治療というのは、カテーテルという器具を使って、行う治療です。

日本ではASDPDAに対するカテーテル治療ができるようになっており、大人ではTAVI(大動脈弁置換術をカテーテルで行うもの)が導入されています。これはTAVIの肺動脈バージョンって考えてもらったらいいかな、と思います。

 

カテーテル治療の方法

 

①足の血管(大腿静脈)からカテーテルを挿入し、肺動脈まで持ってきます。

②位置を決め、肺動脈弁に弁が逢着されたステントを留置します。

③無事留置できたら、カテーテルを抜いて終了です。

 

とても簡単です。入院も数日(5日くらいかな?)で済みます。

最大の利点としては、胸骨を開くこともなく、心臓も止めずに手術ができるという点です。普通の開心術と違ってかなり負担が小さくなります。なんでもかんでもカテーテルで治療ができれば本当にいいのですが、そういうわけにはいきません。しかし、肺動脈弁置換術はカテーテルででき、今日本に導入されようとしているところなのです。

 

下記のYoutubeのページはMedtronic社のページですが、動画でMelody valveをカテーテルで留置するところを載せていますので、良かったら見てみてください。https://www.youtube.com/watch?v=EloEHR4Rveg

 

すべての肺動脈弁置換術がなくなるわけではないと思いますが、生涯に何回も施行しないといけない肺動脈弁置換術を1,2回減らせる可能性があるので、このカテーテル治療は非常にいいのでは、と個人的に考えていますし、早く日本で使えるようになってほしいな、と思っています。

 

今までTOFの事をたくさん話してきましたが、実はTOFはまだまだチェックポイントがたくさんあります。

列挙すると下記のようになります。。。

 

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図:TOFのその他のチェックポイント

 

たくさんあるので、ここに書いてあることが全てだと思わないでほしいのですが、重要な事は書いてきたつもりです。

なかでも一番大事なので、「円錐中隔(* conus septum)の前方偏位」です。TOFの基本中の基本です。これを理解できれば、後はちょろいのでこれだけは理解するように頑張ってください。

(* Conus septum=infundibular septum=outlet septumです。現在は後者2つの方が一般的なようです。)

 

では次回からはTGAについて。割と単純で理解しにくいところはないと思いますが。

 

追記:

質問にあったので、ここに記載しておきます。ちょっとコメントの返信の仕方がわからないのでご了承ください。これらMelodyなどのDeviceが日本に導入されるのは「そのうち」としか言いようがありません。ちなみにASDに対するASOが日本に導入されたのは世界から10年ほど遅れてからです。最近導入されたPDAのDevice、ADOⅡは2013年にアメリカのFDAで認可され、やっと2019年Ⅰ月に日本で使えるようになりました。この場合は約5年くらいですかね?残念ながら、まだMelodyなどは日本では使えないのですが、使えるように働きかけている、というのが現状です。適当な事を言わせてもらえば、多分2020 年から2025 年くらいに導入になるのではないでしょうか?