誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

不整脈:心拍数の数え方ついて 〜基本28〜

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長い間おやすみしていて申し訳ありません。なかなか不整脈の記事を書くのが難しくて難航していました。前の記事の心電図とwide QRSについての話は大丈夫でしょうか?簡単に復習すると、

・心電図はⅡ誘導だけ見よう!

・前の心電図と比べよう。

・刺激伝導系(赤い高速道路)から心室に伝わる時はnarrow QRS

・刺激伝導系(赤い高速道路)以外から電気が伝わる時はwide QRS

・右脚ブロックと左脚ブロックもwide QRS。

・右脚ブロックは左室から右室へ伝導するイメージ。V1でQRSがM字の山に。

・左脚ブロックは右室から左室へ伝導するイメージ。V6でQRSがM字の山に。

ざっとこんな感じの話をしました。単純な話をめちゃくちゃ長々と書いているので、読んでもらうとわかるのではないかな、と思います。と言うことで、今回からはやっと不整脈の話に入っていこうと思っていましたが、もう一つ話しておきたい事があったので、簡単に書いておこうと思います。いろんな教科書に載っているので、知っている人も多いと思いますが、心電図を見る上でもう一つ大事な事があります。それは、心拍数です。

みなさん、心電図を見てすぐに心拍数がわかりますか?「モニターにでてるじゃん」とか「心電図の紙に書いてあるけど」とか思った人いるかもしれませんが、そういう事ではありません。心電図の波形だけ見て、大体の心拍数がわかるかどうか?という話です。モニターの心拍数は心拍が安定していないと数字が出てこないので、ちゃんとした情報ではないことが、ちょいちょいあります。特に不整脈の場合は、モニターの数字が当てにならない事が往々にしてあります。不整脈が出てすぐ消えたり、安定しない事があれば、モニターは嘘の数字を表してしまいます。この時に不整脈の心電図の波形だけ見て心拍数がわかれば、非常に有用ではないでしょうか。デジタルに慣れているとこういう応用が効かない事が多いのですが、なるべる心電図の波形だけ見て、おおよその心拍数をわかるようにしておくのがいいと思います。覚える事は1つだけです。それは下の式です。

心拍数= 1500 ÷ RRPPmm  (25mm/secの心電図で。)

 

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図:心拍数の数え方

たくさん覚えようとすると、絶対に覚えられないので、この式だけ覚えるようにしましょう!大体の心電図は25mm/secなので、この式で簡単に計算できます。上の図のように、大きいマスは5mmなので、大きいマス1個分であれば、心拍数は1500÷5=300、心拍数300bpmになります。大きいマス2個だったら10mmになるので、1500÷10=150と、心拍数は150bpmと簡単に出てきます。同じように大きいマス3個分だったら、1500÷15=100と心拍数100bpmと簡単にできるのです。マスが7mmだったら、大体300と150の間だから心拍数200前後かな、と大まかにパッとできます。計算してもほぼ暗算で1500÷7=210くらいかな?と心拍数は簡単にでてきますね。

ここで注意してほしい事は「1500÷何mm=心拍数」以外は覚えないでほしい、という事です。これだけ覚えて、大きい2マスだと10mmだから心拍数150だわ、といちいち軽く計算する事です。「大きいマス3個が心拍数100bpm」って覚えちゃう人がいますが、そうすると、他の心拍数の時に全くわからなくなってしまいます。僕も不器用なので、両方覚えようとして、簡単なので、大きいマスが4個で75とか、3個で100とか覚えて応用が全く効かなくなった経験があります。なので、「1500÷何mm=心拍数」っていうのを覚え直しました。これだったら応用が効くのでこちらの式を覚える事をおすすめします。

ではクイズです。下の心電図の波形だけ見て心拍数を当ててみましょう。

 

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図:心電図の心拍数クイズ

どうでしょう?正確な心拍数を瞬時にわからなくても大体の数字がすぐ出せたのではないでしょうか?上の問題では右の心電図では大体心拍数90bpmくらい、真ん中は大体80 bpmくらい、左は150より少し遅くて140bpmくらい、と出せればそれでOKです。正確な心拍数を出すことにそんなに意味はないので、おおよそこれくらいってのが、瞬時に出せる事がとても重要です。ちょっと慣れなければ、心電図の波形を先に見て、心拍数を当てる練習をしばらくすると慣れます。便利なので、ぜひ「1500÷何mm=心拍数」を使っていきましょう。モニターをみながら、心拍数の数字を見ずに波形だけで、心拍数どれくらいかな、と自分でチェックする癖もつけるとなお浸透しやすい、と思います。モニターにはmmがわかる四角がない場合も多いので、難しいかもしれませんが・・・。

これができるようになると、不整脈が出た際の不整脈の心拍数がすぐにわかるようになります。不整脈の心拍数は結構重要なので、どれくらいのrate(心拍数)の不整脈なのかで、判別できる事もありますし、ペースメーカーが入っている人であれば治療にも大いに役に立つ指標となります。なので、不整脈の心拍数(rate)、できれば波形だけからわかるようにしてもらえるといいかな、と思います。循環器の医師でも即座にわからない人たくさんいるので(本当?)、ドヤ顔できますし、一目置かれる可能性もあります。ぜひマスターしておくことをおすすめします。

 

まとめ

心拍数を心電図の波形を見て判断しよう、という話でした。1500÷何mm=心拍数の式を使うだけで、心拍数はすぐにわかります。後は慣れの問題なので、モニターを見るたびにちょっと計算してみるとすぐに定着すると思いますので、ぜひ試してみましょう。史上最強に短い記事だったのですが、不整脈の話をしようとした時に、これ知らないとキツイな、と思いつけたしてみました。

という事で次は不整脈の大枠について話していこうと思います。