前回は「TOFの本質は円錐中隔(conus septum)の前方偏位」について説明しました。前回のところはTOFでは最も重要なので、わからなければ、誰かに聞くなり必ず理解するようにしてください!
またConus septum(円錐中隔)は現在一般的にはinfundibular septumまたはoutlet septumと呼ばれていますので、そちらの用語でも同じ意味なので、混乱しないようにしましょう。
下の図を見てもう一度復習しておきましょう!
図:TOF:Conus septumのまとめ
今回はTOFの臨床経過について説明していきます。
どんな症状が起こり、どんな経過をたどるか説明していきます。
まず下の図を見てください。
図:臨床経過
TOFはこのように何回も手術や介入が必要になる疾患です。心内修復術をして普通の血行動態に戻ったら終わり、というわけではないんです。
ここからはこの経過のなかで細かく区切ってポイントを説明していきます。
TOFの出生〜姑息手術まで
まず一番はじめの「出生〜姑息手術」のあたりについて話していきます。
TOFは出生時から以下のような症状が認められます。
・心雑音がある。
・SpO2が低く、チアノーゼを呈する。
そのため、割と簡単に出生時から見つかります。現在はかなりの症例が胎児エコーでわかってしまっているのではないでしょうか。
図:TOF出生時
TOFの心雑音は肺動脈狭窄の音!!
上の図のように円錐中隔(conus septum)が前方偏位するため、肺動脈が狭窄します。
結論から書いていますが、TOFで認められる心雑音は肺動脈狭窄の音です。VSDの音ではありません。よく勘違いされます。この音は結構大事なので、覚えておいても損はありません!この文面を読んでも覚えられませんが、実際に患者さんの心雑音を聴いてみると実感しますし、覚えられます。
「TOFの雑音は肺動脈狭窄の音!」
大体胸骨の左側の上の方で収縮期雑音がしますので、聴いてみてください。(正確には胸骨左縁第2肋間)聴いてみるのが大事です。
TOFはチアノーゼを呈する疾患
TOF出生時の特徴としてはチアノーゼを認める事です。円錐中隔が前方偏位し、肺動脈が狭窄するため、肺に流れる血液が少なく、酸素化される動脈血は少なくなります。
それとともに、TOFでは前方偏位によりVSDが大きく開いているので、青い酸素の少ない静脈血がVSDを通り大動脈に駆出され、全身にいってしまいます。このためTOFではチアノーゼを呈する事になります。以前high flowとかlow flowの話をしましたが、TOFは肺に流れる血流が少ないため、low flowの疾患という事になります。 (→low flow については2019/2/28〜2019/3/13の記事4回くらいに渡って記載しているので、わからなければ、参考にしてください。)
基本的にはSpO2が80%以下になるならば、ちょっとチアノーゼが強く、心内修復術まで持ちませんので、肺血流を増やしてあげるために姑息術をします。
その手術が 「BTshunt手術」です。
BTshunt手術
図:BTshunt手術
BT shunt手術とは根本的に心臓を治すわけではなく、一旦少ない肺血流を増やすための「つなぎ」の手術となります。以前も説明しましたが、こういう「つなぎ」の手術を姑息術といいます。
みなさんのよく知っているグレン手術や肺動脈絞扼術(PA banding)、BT shunt手術なんかは姑息術にあたります。
ではBT shunt手術は肺血流を増やすためどうするかと言うと、上図のように鎖骨下動脈と肺動脈を3.5mm〜4mmくらいの人工血管でつないでやるのです。こうすることで肺に流れる血液を大動脈から無理矢理引っ張ってきて増やすことができるのです。
この手術は
・人工心肺を回す必要がない(心臓を止めないで手術できる)
・側開胸でできる
という特徴があります。このため体への負担は少なく患児にとっては楽ちんな手術なのです。
このBT shunt手術を行う事によって過度なチアノーゼを防ぎ、心内修復術ができる体格(1歳10kgが目安)まで体を大きく育てる事ができるようになります。
まとめると
出生時から3ヶ月くらいにかけて
・心雑音(肺動脈狭窄の音)あり
・チアノーゼあり
・チアノーゼがSpO2<80%ならBTshunt手術で肺血流を増やそう。
という感じです。
しかしこの時期にもう一つ重要な症状があります。よく知っているかもしれませんが、Spell(スペルといいます、日本語では無酸素発作といいます。)です。次回はSpellについて話していきます。