誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

ファロー四徴症( TOF: tetralogy of Fallot )について 円錐中隔の前方偏位 ~ 疾患6

<スポンサーリンク>

今回はFallot四徴症について話します。

読み方はファロー四徴症です。よくTOFとかTFとか略されます。

今回は面倒なので、TOFと略します。

先天性心疾患の中で割とよく見られる疾患です。

諸説ありますけど、先天性心疾患の中の1割がTOFです。

もちろんVSDとかASDの方がもっと多いですけど、TOFも本当によく見る疾患です。

またTOFは大人になってもちょいちょい入院したり、手術したりして、小児ではないけど、小児循環器に入院したりこども病院に入院したりするので、割と遭遇する可能性は高いです。

今回はこのTOFについてなるべく簡単に理解できるように話していこうと思います。

 

TOFについて

TOFの心臓は下の図のような形をしています。まずサラッと見てください。

 

f:id:inishi:20210607144400j:plain

図:

 

TOFはファロー四徴症といいますが、四徴ってサラッと言えますか?

上の図にも書いてありますが、4つをあげると

 心室中隔欠損

 ・肺動脈狭窄

 ・右心室肥大

 ・大動脈騎乗

この4つになります。国家試験などでも必ず覚えた4つですね。

こんなの覚えられない、と思った方は多いのではないでしょうか?

 

実はこれ、覚えなくてもいいのです。

覚えるべきことはただひとつ!!上の図の赤いところの筋肉です。

ここを

円錐中隔(または漏斗部中隔)

  (Conus septum)=infundibular septum=outlet septum

といいます。

円錐中隔と日本語で話すことは少なく、「コーヌス セプテム」といつも言っています。日本では、よくConus septumと言っているところも多いかもしれませんが、最近はConus septumを「infundibular septum(インファンディブラー セプテム)」または「 outlet septum(アウトレット セプテム)」と言うのが一般的なようです。

実は「Conus septumを「コーヌス (Conus)」とだけ呼んでいる日本の小児循環器科医が多いです。

僕もそのように略すものなのか、と思っていました。が、Conus(コーヌス)というと別の場所の事を意味することになりますので注意が必要です!正式にはConus=VIF(ventriculo-infundibular fold)(簡単に言うと、三尖弁と肺動脈弁の間にある心室の筋肉のこと、DORV(両大血管右室起始症)の記事で説明してます)なので、正式名称として使用する場合では「Conus septum」を「Conus(コーヌス)」とは呼ばない方がいいと思います。

今回の記事ではConus septumで話をしていこうとおもいますが、infundibular septumやoutlet septumと言われても、Conus septumと同じ事だと思ってください。

話を戻すと、ここ、Conus septumの構造を理解することがTOFでは最も重要であり、ほとんどすべてだと言えます。なので、これから話す事をなんとか理解できるように頑張ってください。一度理解できれば、もうTOFの四徴を覚える事は必要ないと思えるようになると思います。

 

TOFの本質は円錐中隔(Conus septum)の前方偏位です!!

この文句「TOFの本質は円錐中隔(conus septum)の前方偏位」をとりあえず頭にいれてここから読んでください。

 

心室が前、左心室が後ろ

まずこの「前方偏位」という言葉が意味がよくわからないと思います。

上の図だと便宜的に横にズラして書いていますが、実際は赤い筋肉のConus septumが前方に偏位しているのがこの病気の本質です。

上図のように心臓の右心室と左心室は絵では横に書いているのですが、実際は前後関係なのです。

下の図が心臓のCTですが、前にあるのが、右心室で、後ろにあるのが左心室です。カテーテルの動画などを見てみるとよくわかるかと思います。

 

f:id:inishi:20201105154654j:plain



図:右心室が前、左心室が後ろ

 

なかなかこの位置関係理解できない人がいますが、実際は前後関係なのです。

  「右心室が前、左心室が後ろ」

この事をまず理解し頭にいれてください。

 

心室中隔はこうしてできる

次に心室中隔の成り立ちをちょっとだけ話します。

普通心室中隔ができるとき、洞部中隔(この名前本当にどうでもいいのでおぼえないでください。)と円錐中隔(conus septum)が下図のように伸びてきて丁度合わさり、孔のない心室中隔が出来上がります。

 

f:id:inishi:20210607153619j:plain

図:心室中隔の発生

 

円錐中隔(conus septum)の前方偏位

しかしFallot四徴症では円錐中隔が発生の時に「前」にずれてしまっています!!

下の図を見ながら読んでいってください。

絵では横に書いていますが、もう一度言うと右心室が前で、左心室が後ろです。

 

f:id:inishi:20210607153651j:plain

図:円錐中隔の前方偏位

 

円錐中隔(conus septum)が発生の時に前にずれてしまったうなるでしょうか?

図のように赤い筋肉、円錐中隔(Conus septum)が前にずれるので、心室中隔が合わさらず孔ができてしまいます。(心室中隔欠損症

円錐中隔は大動脈と肺動脈の間にある筋肉なので、前にズレると、図のように肺動脈は狭くなり、大動脈は大きめになります。このため、肺動脈の狭窄が生じます。(肺動脈狭窄)

円錐中隔(Conus septum)が前にズレたぶん、心室中隔は大動脈の真ん中に来るような形になってしまいます。(大動脈騎乗)

肺動脈に狭窄ができると狭い肺動脈に血液を送ろうと右心室がパワーを使うため、右心室が肥大します。(右心室肥大)

 

このようにFallot四徴症の4つの特徴はすべて円錐中隔(conus septum)が前にずれてしまったことによってできているのです。

なので、Fallot四徴症は4つの特徴を覚えるのではなく、円錐中隔(conus septum)の前方偏位を理解して、

「前にずれるから心室中隔はあわさらずVSDができ、前にずれるから肺動脈が狭窄し、狭い肺動脈に血液を送るため右室が肥大し、前にずれるから、大動脈に騎乗する・・・」

という感じでちょっとだけ考えて4つの特徴が導き出せるようにしましょう!

なので覚えるべき事は唯一つ

 「円錐中隔(conus septum)の前方偏位」

これだけなのです。これがFallot四徴症の本質であり、最も重要な部分です。

 

多くの教科書にもこの事は書いてありますが、わかりやすいように書いている教科書はあまりないと思います。

でもめちゃめちゃ大事です。本当に。

ちょっと難しいですが、これが理解できればTOFは理解できると思うので、ぜひ円錐中隔(conus septum)の前方偏位を理解できるように頑張ってください。

 

何度もいいますが、TOFの本質は円錐中隔(conus septum)の前方偏位です。なんとか理解してください。わかりにくかったら編集しますので、コメントください。

 

次回はTOFの臨床経過などについて話して行きたいと思います。

 

ちなみになぜ何回も英語でconus septumと書いているかと言うと、医師が話をする時には円錐中隔と日本語で言うことはありません。なので、できたら、コーヌス セプテムで覚えてもらったほうがいいと思い、このように書いています。

またConus septum=infundibular septum=outlet septumなので、他の用語を使っている病院も多いかと思います。世界的にはinfundibular septumやoutlet septumを使うのが一般的なようなので、そちらで覚えてもらった方がいいかもしれません。ここの記述に関しては最初に投稿した時には間違えて記述していたので、訂正させていただいています。よろしくお願いいたします。