前回も前々回もFontan手術については触れてきているので、
だいぶわかっているとは思いますが、今回はFontan手術について説明します。
図:Fontan手術
Fontan手術は上記のようにつないでやる手術です。
ですが、肺に血液を流すためのポンプがないのが最大の問題点となります。
水が高いところから低いところへ流れていくように、圧の高い静脈から圧の低い肺動脈に血液を惰性で流すしかありません。したがって、
肺動脈には圧の差に従って血液を流すしかありません。
しかし、ここで問題となることがあります。
よく考えると、上大静脈(SVC)や下大静脈(IVC)の静脈圧はせいぜい5-10mmHg程度で、もともとは血圧は低い血管なのです。
こういう圧の低い血管から血液を流すためには、
肺の血圧が低くないと血液は流れません!!
肺の血圧が10mmHgであれば、SVCとIVCは10mmHg以上でないと、血液が流れないのです。
そして、肺に血液を流すために、FontanではCVPが高くなってしまいます!
なので、Fontan手術が成り立つためには、
肺の血圧が低い事が重要な条件になるのです。(=肺血管抵抗が低い事)
肺の血圧が低くないと血液が流れないのです。
図:Fontanは静脈圧が高い
上記の図を参照してください。
IVCやSVCの静脈圧などは総称してCVP(中心静脈圧)と言います。
CVPは通常であれば、5mmHg程度です。
ですが、Fontan手術は肺の血圧が10mmHg程度なので、
Fontan手術の子はCVPが10-15mmHg程度です。
肺に血液を流すために、CVPは高くしないと成り立たないのです。
これがFontan手術の特徴です。
もう一度言うと
通常はCVPが5mmHgなのに、FontanはCVP 10-15mmHgになります。
Fontan手術は優れた手術ではありますが、
ここが、Fontanの弱点になっていきます。
CVP(中心静脈圧)が高いと何に困るか?
通常のCVPは5mmHgなのにFontanでは10-15mmHgもあります。
中心静脈にはいろんな血管が返ってきます。
肝臓、腎臓、胃・腸などお腹の重要な臓器の静脈はIVCに返ってきます。
しかし、Fontan手術ではCVPが高く、血液が返りにくくなっています。
血液はうっ滞し、長年かけてジワジワ臓器にダメージを与えてきます。
図:Fontan術後の臓器障害
簡単に言うと高いCVPのため肝臓や腸、腎臓などにダメージを与えいきます。
・肝臓は肝臓癌、肝硬変
・腎臓は腎機能低下
・胃腸は有名な蛋白漏出性胃腸炎(PLE)(蛋白が漏れて下痢になります、難治性で予後が悪いです。。。)
簡単に言うとこんな影響があり、若い頃は割と元気でも20~30歳くらいになるといろいろな合併症に苦しむ事になります。
なので、Fontan手術では少しでもCVPが低くする事がとても大事になります。
CVPを1mmHgでも低くするように、いろんな方法を考えていきます。
これがFontan手術です。
まとめ
まとめると
・単心室だが、チアノーゼは基本的にはなくなる。
・CVPは通常は5mmHgだが、Fontanは10-15mmHgある。
・高いCVPのため、様々な合併症がでる。
こんな感じになります。
合併症の話などを考えると、Fontan手術はあまり良くないのではないか、と思うかもしれません。確かに最近は、Fontanはあまり良くない、という風潮があります。。。
しかし、前回話したように、単心室はFontanでなければ、姑息術で終わってしまい、生涯チアノーゼが残り、それもなかなか予後が悪いです。
なので、Fontan手術はすごく画期的な手術なのです。
じゃ、どの手術が良くて、どの手術はいまいちなのか、
個人的な意見を次回話していきたいと思います。