前回は先天性心疾患は大きくわけて、単心室と二心室があるという話をしました。
今回はその治療についてもう少し話していきます。
まず、下の図を見てください。
簡単にするとこのような流れになります。
では二心室と単心室に別れた後の経過について簡単に説明します。
二心室の経過
二心室の児はBT shunt術などの姑息術をはさんで、1歳、10kgを目安に心内修復術を施行します。
心内修復術とは、いわゆる普通の循環に戻してあげる手術の事です。右心室→肺動脈、左心室→大動脈が出るように手術します。
二心室循環の児も大きく2つに別れ、
心内修復術後は何も追加の手術が必要でない場合と、
大きくなってから弁置換術が必要になる場合があります。
もともと肺動脈弁が狭かったり、なかったりする場合には生体弁を使ったり、シートで弁のようなものを作成して肺動脈弁にします。こういう弁は逆流や狭窄が後々生じるため、大きくなってから、また再手術(弁置換術)をする必要があったりします。
とは言え、二心室あるという事はとても有利であり、単心室と比べると予後は良いと考えます。
単心室の経過
単心室とは本来、右心室・左心室と2つ心室があるところが、何らかの原因で、心室が1つしかない状態(もしくは2つあるけど、1つは小さすぎる等)を単心室と言います。
使える心室は1つしかありませんので、その心室は全身に血液を送るために使用します。
肺に血液を送る心室はありませんので、血液は惰性で肺に流すしかありません。前回と同じ絵ですが、前回の記事の図のようにSVCとIVCは直接肺動脈につなぐことになります。
こうする事で静脈血は肺に、動脈血は全身に駆出され、理論的にはチアノーゼはなくなるのです。
これがFontan手術です。
単心室では最終的にFontan手術(フォンタン手術)を目指すことになりますが、いきなりFontan手術にすると循環の変化に体がついていかない事も多く、現在は両方向性Glenn手術(俗にグレン手術といいます)を挟んで、Fontan手術を目指します。少し詳しく言うと上記の図のような経過になります。
・一般的に生まれてすぐは大変です。血行動態にあわせて
肺動脈絞扼術(PAbanding)、BTシャント手術、Norwood手術などをします。
・その後落ち着いたら、3-6ヶ月くらいに
BDG(両方向性Glenn手術)をします
・その後条件を満たせば、Fontan手術は2歳前後で施行します。
*手術の時期は施設によって多少時期は変わります。
海外でも少し違います。
Fontan手術がうまいこといくと、20歳くらいまでは元気でいける事が多いです。生まれてFontan手術までは入院とか手術がたくさんありましたが、それからはほとんど入院などがない生活ができて、普通に学校とかにいけます。
大雑把にいうと先天性心疾患の方は
この2種類の経過を辿ります。
Fontanできなかった子は?→姑息術で生きていく
ただし、単心室の子はFontanでなければ、姑息術のままで生きていく事になります。
姑息術とは、Fontan手術や心内修復術等の手術への橋渡しの役目をする手術の事を言います。イメージとしては「本番の手術までの途中の手術」です。
姑息術にはいろいろあり、肺動脈絞扼術(PAbanding)、BTシャント手術、Norwood手術、グレン手術(BDG)などなど、いろいろあります。
姑息術のままだと、チアノーゼを抱えて一生生きていく事になります。
チアノーゼは生まれたての1,2年くらいはどうってことはありませんが、
長年続くとと腎臓、肝臓に悪影響(頭にも悪影響?)となります。
寿命はよくて、4、50歳でしょうか?(ここは正直よくわかりません)
肺高血圧になるケースもあります。
チアノーゼのため、多数の側副血管ができて喀血して死んだりもあります…。
なかなか難しいところです。
なので、単心室は基本的にFontan手術を目指していきます。
次回は大雑把にFontan手術について説明していきます。