はじめに断っておきますが、
わかりやすい事が目的ですので、当てはまらない事も多いと思います。
ただ、このような事を小児循環器をやっている人は大体わかっていますが、それを記述している教科書などはあまりないと思います。
なので、参考程度に思ってもらえるといいです。
今回話すのは先天性心疾患の手術別の幸福度ランキングです。
予後ランキングと言ってもいいかな?
これまでFontan手術や二心室修復などについてざっくり説明しました。
全体像を知る上で、手術のその後や予後は重要だと思います。
僕が考える予後ランキングを手術別に簡単にしてみましたので、見ていきましょう!
図:手術 予後ランキング
とりあえず上の図を見ていただくのが一番いいと思います。
解説をすると、
まず二心室修復が一番いいです。これは誰も反対する人がいない事実だと思います。人間の本来の形は右心室から肺動脈、左心室から大動脈がでる形態になっており、この形が一番予後はいいです。VSDやASDの修復後や、合併症のないTGA、TAPVC、弁輪温存できたTOFなどもこれに当てはまるのではないでしょうか?
次にいいのは、ファロー四徴症に代表される、二心室修復です。
右心室から肺動脈、左心室から大動脈が出るので形としては理想的です。
しかし、弁が(肺動脈弁)イマイチだったりするため、TOFならTAP(後に説明しますが、TOFのよくある右室流出路の修復のやり方です。)で修復していたり、Rastelli手術で人工弁や導管だったりするため、いずれ狭窄や弁逆流が問題になり、再手術が必要になります。早いと5-10歳くらい、遅ければ20-30歳くらいまで持ったりするため、人それぞれですが、総じてまあまあいい予後だと言えます。
個人的にはいいFontan手術はこの次くらいに来るのではないか、と思います。
Fontanは少なくともうまくいった場合は青春時代はほとんど普通と変わらないくらいの生活ができると思います。
ただし、20-30歳くらいになると前回話したように、様々な合併症が顔を出すようになってくるため、それまでの順風な暮らしは変わってくると思います。そのギャップに戸惑う患者さんも多いと思います。
Fontan手術はまだ何歳くらいが寿命なのかはわかっていません。
めちゃくちゃ長くはないと思います。
それでもいいFontanはこのあたりに位置するのではないかと思います。
そして次に位置するのは姑息術で終わっているタイプだと思います。
チアノーゼが残っていたり、といろいろ問題はあるでしょう。
それでも青春時代を普通に過ごしている人も結構いるため、イメージしているよりはいいのではないでしょうか?
それでも20歳超えるといろいろ問題もあるため注意が必要です。
そうであっても、無理してFontan手術や二心室修復に行ってしまったタイプよりは姑息術のままで過ごしている方が良いと考えられます。
良くないのは無理して行った、二心室修復と条件の悪いFontanではないでしょうか。。。
無理して行った二心室修復はかなりしんどい経過になると思います。
普通の青春は送れない可能性が高いです。
個人的にはおすすめしませんし、多くの施設でも同様だと思います。
今回の記事で最も重要な点はここにあります。
無理していく二心室修復よりFontan手術のほうが幸せ、ということです。
多少のご意見はあるかもしれませんが、
現状では予後ランキング、幸福度ランキングを作るとすれば、上の図のようになり、この認識は多少の違いがあっても現状、大きな間違いはありません。
二心室修復>Fontan>姑息術>無理していった二心室≒悪いFontan
という順番ではないでしょうか。
こういう事を頭に入れると、最初の手術の選択が重要になってきます。
できれば二心室修復を誰もが目指したいのですが、
無理な人もいます。
はっきりとしている人は迷う事なくFontanや二心室を目指せばいいのですが、
実際のところ微妙な人も結構いるわけです。
僕らにとっては、
Fontanか二心室か微妙な人が最も迷うところなのです。
できれば、二心室に行きたいが、無理してコケたら一番悪い事になってしまいます。なので、無理して二心室にはいけません。
よいFontanであれば、割といい予後が期待できます。
ただし、Fontanは長期予後はわかっていませんし、やはり良くないのではないか、という話も聞ききます。
今後Fontanの長期予後が明らかになるに連れて、こういうところもはっきりしていくのだろうと思います。
いかかでしょうか?
このような予後ランキング、幸福度ランキングを考えると
どのような手術に進むかが、かなり重要になってくるかおわかりいただけると思います。
はじめに決まってしまいます。
なので、間違った舵取りをしてしまうと、その子の今後の一生に大きな影響を与えてしまうので、小児循環器内科にとって、ここの選択には非常に重要なところです。
どういう条件であれば、二心室修復に行けるか、という論文はかなりたくさん出ています。いろんなスコアもありますし、各施設で、どの子がいけたか、などのデータもあるのではないかと思います。
今回は難しい事はいいので、将来の予後ランキングを頭にいれつつ、どこを目指せば、患児にとって最も良いかを考えて診療ができれば、それでいいと思います。
では次回は基本的な事ですが、