前回、ハイフローについて説明しました。
ハイフローとはhigh flow=高肺血流を意味しており、肺に血液がたくさん流れる状態のことを言います。肺に血液がたくさん流れるとしんどくなります。
言葉だけではよくわからないと思いますので、
最もpopularな疾患である心室中隔欠損症を例に説明していきます。
知っていると思いますが、心室中隔欠損症は
ventricular septal defectを略してVSDといいます。
最も多くいる疾患で、100人に1人くらいはいる疾患です。
右心室(RV)と左心室(LV)の間に孔が開いている疾患です。
図にすると下記のようになります。
まず前提として知っておいてほしい事は右心室は肺に血液を送るのに対して、左心室は頭、手、足、お腹・・と全身に血液を送らなければなりません。
右心室は肺にさえ血液を送ればいいので、血圧は20-30mmHg程度のパワーで十分です。
それと比べ、左心室は全身に血液を送らないといけないので、100mmHgもパワーが必要となります。
普通は右心室と左心室に壁がありますので、パワーの違いは問題になりませんが、孔が開いているとどうでしょう。
右心室は20-30mmHgの血圧、左心室は100mmHgの血圧なので、血液は孔を通って左心室から右心室へと流れていきます。
血液はVSDを通ってそのまま肺へ
ここまではみなさん大丈夫だと思いますが、ここで一つ覚えておいてほしい事があります。
心室中隔欠損症(VSD)では左心室から右心室に血液が入りますが、
右心室に入った血液が、ほとんどそのまま肺動脈に流れていってしまいます。
右心室はチラッと通るくらいに思っておいてください。
左心室からVSDを通り、肺に血液が流れると、
肺に流れる血液は増加します。
図のように考えてみましょう。
全身に10の血液が流れていると考えてください。
つまり普段は肺に10、全身に10血液が流れています。
VSDを3の血液が通るとします。すると肺には、全身から返ってきた青い10の血液とVSDを通った3の血液の合計13の血液が肺に流れていきます。
つまり、本当は10しか流れない肺に13の血液が流れる事になります。肺に流れる血液が10→13に増加するため、
この状態をhigh flow(ハイフロー)と言います。
*イメージとしてはもっとたくさん肺に血液が流れている状態をhigh flowとみなさん言っていると思います。
ただし、10→13になった程度では、1.3倍しか肺に流れる血液は増えていません。この程度では、そこまでしんどくありませんが、2倍、3倍血液が流れるようになると、かなりしんどくなります。
肺に流れる血液多くなると、肺は水浸し状態になり、呼吸がしんどくなります。
すると赤ちゃんは呼吸が荒く、早くなり、ミルクも飲みづらくなり、体重も増えなくなります。
High flowになるとしんどくなるのはこのためです。
症状としては、「呼吸がはやい」「陥没呼吸をしている」「ミルクをすぐ休む」「体重が増えない」などです。
肺に血液が多くしんどい
→呼吸が早くなる
→ミルクが飲めない、カロリー消費が多くなる
→体重が増えない
となるわけです。
これがhigh flowです。
VSDの赤ちゃんが生まれて割とすぐ手術する事がありますが、こういう赤ちゃんはhigh flowでしんどいため手術となるのです。
VSDについては重要な疾患なので、どこかでちゃんと説明します。
VSDを例にhigh flowを説明させていただきましたが、どうでしょうか?なんとなくつかめましたか?
これはめちゃくちゃ大事な事なので、頑張って理解するようにしましょう!そして患者さんを(主に赤ちゃんですけど)見る時に
「この子は肺の血流が増えているの?減っているの?」
ってことを常に意識して心臓の子を診ていきましょう。
循環器の医師はこのことしか考えてない、と言っても過言ではありません。
肺の血液が多いので、なんとかして少なくしよう、と考え、いろいろ治療を行うのです。(この治療についても後にどこかで説明します。)
では、次回も肺の血液増える疾患について考えていきます。