ハイフローについて話してきましたが、もう少し続きます。
「High flowには飽きたし、わかったからもういいよ!」
と思うかもしれませんが、本日は
「肺血流がどのくらい増えたか?」
を中心に考えていこうと思います。
High flowの程度を考えていこう
肺血流が増加するという概念はなんとなくわかってきましたか?
High flowになるとしんどくなりますが、
実はちょっと肺血流が増えたくらいでは全然しんどくなりません。
どれくらい肺血流が増えるか、によってしんどさは決まってきます。
結論からお話しますが、high flowの程度は
「孔の大きさ」と「圧の差」で決まってきます。
では、また心室中隔欠損症(VSD)を例にとって考えていきましょう。
VSDでhigh flowの程度を考えよう
ちょっと考えれば当たり前だと思うでしょうが、
VSDの大きさが大きければ、大きいほど肺に行く血液量は多くなっていきます。
図 大きいVSDと小さいVSD
VSDが大きければ、それだけたくさんの血液がVSDを通り、肺に流れていきます。小さいVSDならば、ちょろっとしか肺血流が増えないのは自然に理解できると思います。
では、生まれたての赤ちゃんのVSDはどれくらいであれば、大きいのでしょうか?
6mm以上のVSDは大きい
ズバリ、「6mm以上のVSDは大きい」です。ほぼ乳児期に手術が必要になると考えて間違いありません。
なぜ6mmなのかと言いますと、新生児の大動脈弁は直径6mmなのです。
正常心ならば左心室の出口は大動脈弁だけですが、VSDがあれば、左心室の出口はVSDと大動脈弁の2つになります。
図:VSD 6mmの場合の血流 6mmと3mmのVSDのイメージ
つまりVSDの大きさが6mmならば、大動脈弁も6mmなので、左心室からはVSDに10、大動脈に10、血液が流れます。そうすると大動脈から全身に10血液が流れるので、全身から右心房にかえってくる静脈血も10になります。右房にかえってきた血液はそのまま右心室に渡されますが、ここでVSDを通った10の血液が合流して肺動脈にながれていきます。つまり肺動脈には全身から帰ってきた静脈血10+VSDを通った動脈血10、あわせて20の血液が流れる事になるのです。
・全身には10の血液が流れる。
・肺動脈には静脈血の10+VSDを通った血液10、あわせて20の血液が流れる。
このように考えると、全身に10、肺動脈に20、つまり肺動脈には全身の2倍の血液が流れていることになります。
(実際はこんなに単純ではありませんが。。考え方が大事です。)
孔の大きさ(VSDの大きさ)に注目しよう!
VSDの孔の大きさについては教科書などにいろいろ書いてあると思います。
下記のような記述が多いのではないでしょうか?
<VSDには小、中、大欠損孔があります。
小欠損孔は大動脈弁の1/3以下….
中欠損孔は大動脈弁の大きさくらいまで
大欠損孔は大動脈弁より大きい….>
など書いてありますが、わかりにくいですよね。
でも実は、言いたい事は一つです。
注目は「大動脈弁と比べてどれだけ大きいか?」という事です。
覚えとくといい数字は
新生児の大動脈弁は直径 6mm という事です!
「VSDが6mm以上のやつは high flowでしんどいんじゃねえ?」って疑えればOKなのです。
ちなみに3mmと6mmのVSDでは、「3mmしか変わらなくない?」
と思われる人もいるかもしれません。
でも大きな違いなのです。図をみていただけると納得できると思いますが、
数字上、直径は2倍ですが、
面積は4倍でこんなにも大きさが違うのです。
VSDはたかが1mmでも大きく血行動態が変わってくるのです。
今回はこの辺にしようと思います。
High flowの程度についてVSDの大きさを例に考えていきました。
しかし、high flowの程度ははじめに話したように
「孔の大きさ」と「圧の差」によって決まります。
この2つを理解して初めてhigh flowの程度はわかるようになると思います。
今回の話だけでは、間違った理解になる可能性がありますので、
すみませんが、次回の内容も込みで理解してください。
次回は「圧の差」について話していきます。
* 下のコメントにあるように一部間違っていましたので、訂正しています。よろしくお願いします。