誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

正常の心臓の血行動態

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まず正常の血行動態を知っておこう!

正常の血行動態について話していきます。

これについては、成人の心臓の教科書にもっとわかりやすいものがあるかと思いますが、必要最低限を説明していきます。

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正常心臓

心臓には4つの部屋があります。

名前が4つありまして、右心房(RA)、右心室(RV)、左心房(LA)、左心室(LV)といいます。

かっこ内は略語です。

心室は肺動脈(PA)へ、左心室は大動脈(Ao)につながっています。

右心房を右房、右心室を右室、左心房を左房、左心室を左室と言ったりもします。

静脈血の流れ

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静脈血の流れ

全身で酸素使われた血液を「静脈血」といいます。

静脈血は酸素が低く、青い色をした血液です。

頭や腕で使われた血液は上大静脈から右心房へ、お腹や足で使われた血液は下大静脈から右心房へ戻ってきます。

右心房に集まった静脈血は、そのまま右心室に渡され、右心室から肺動脈に駆出され、左右の肺に静脈血が流れていきます。

右心房に全身から10の血液が戻ってくるとすると、右心室にも10、肺動脈にも10、血液が流れる事になります。

これは当たり前の事だと思われると思いますが、後々大事な事になります。

動脈血の流れ

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動脈血の流れ

肺で酸素をたくさんもらった赤い血液を「動脈血」といいます。

動脈血は左右の肺から4本の肺静脈を介して左心房に流れます。(絵ではちょっと書きにくいですが、実際は左心房は右心房の後ろに位置します。)

左心房にすべて集まった動脈血は左心室に渡されます。

心室はすごくパワーのある心室なので、大動脈を介して頭、手、お腹、足の先まで全身に動脈血を送ります。

肺から左心房に戻ってきた血液を10とすると、全身に駆出された血液も10です。

各部位の血圧

各部位の血圧も重要な事なので、簡単に説明します。

水は高いところから低いところに流れるのと同様に、

血液も高いところから低いところに流れていきます。

下記の図に収縮期の血圧をわかりやすい数字で書いてみました。

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正常の血圧

各部位の血圧は

右房は全身から血液がかえってくるところであり、血圧は5mmHgと低いです。

右室は肺にさえ血液を送ればいいので、20-30mmHg程度のパワーで十分です。肺動脈は右室と同じ20-30mmHgです。

左房は肺から血液がかえってくるため、低いですが、血圧は右房よりわずかに高く、6mmHgです。

左室は全身に血液を送らないといけませんので、強力な筋肉をもっており、血圧は100mmHg(全身の血圧と一緒ですね)くらいあります。

右室は20-30mmHgに対して、左室は100mmHgとだいぶパワーの違いがあることは重要なので、頭のすみに置いておいてください。

正常の血行動態は重要!

 

ちょっと長くなりましたが、正常は大事なので、

上記を理解できるようにしてください。

心に留めておくべきポイントは

① 肺に行く血液量も、全身に行く血液量も同じ。(肺にも10、全身にも10流れます。)

② 左室は右室よりも遥かにパワーがある。(右室は20-30mmHg、左室は100mmHg)

の2つです。

大人や正常の心臓では基本このバランスは崩れませんが、

先天性心疾患はこのバランスが崩れます。

ここが、今後のポイントになっていきます。

正常の心臓の血行動態をしっかり把握するようにしていきましょう。