では前回と前々回の内容を把握してない人はまずそこをマスターしてから見てください。今回はVSDが実際エコーではどう見えるか?を説明していきます。
まずエコーというのは2Dなので、一つの断面した見えません。心臓は立体的なものなので、一度に右心室全部を写す断面はお腹から見上げてエコーをしない限り難しいです。なので、みなさんがよくする4チャンバー(ここでは4chと略す事にします。4CVと略したりもしますが。)や短軸、長軸では様々な分類のVSDでも一部しか見えないです。下の図を見て、どんな断面で心臓を切ってみているのか理解しながらエコーをすると納得しやすいかと思います。
図:心エコーの断面
上の図にあるように4chだと実は一部のmVSD(trabecular muscularやinlet muscular)とinlet VSDくらいしか見えません。角度をもっとつけて上を見るようにすると5chのような画像になり、大動脈やperi VSDなどが見えてきます。右室流出路のあたりは図で表しにくいですが、大動脈を中心に巻きついているような形で前から後ろに延びていくので短軸で切ると見えやすいです。peri VSDやmuscular outlet VSD、Ⅰ型VSDは短軸をずらしたような形で見えやすいです。peri VSDに関しては短軸ずらしではperi inletなのか、peri outletなのかがわかりません。medial papillary muscule(MPM)が同じ短軸をずらした形では出てこないので、MPMの上の方にのびているのか、MPMの下にのびているのかはわかりません。なので、MPMとVSDが一緒に見えている断面を出さないと判断はハッキリとはしません。これはお腹から見上げて出すしかありません。これから一つ一つ断面とVSDの位置の分け方を解説していきます。
4chで見えるVSDの解説
まず一番よく出す4chで見えるVSDについて説明していきます。4chでは
・muscular VSD(inlet muscular, trabecular muscular)
・inlet VSD(房室中隔欠損型)
が見えます。
下の図を見ながら位置関係とエコーで見える断面を見ていきましょう。4chでは下のような断面になります。心尖部の近くにあるVSDはtrabecular muscular VSD(mVSD)が見えます。たくさん開いている事もよくあり、図のようにたくさん開いているやつをwiss cheese type(スイスチーズ様)と言ったりします。合計すると結構な孔の大きさになることもあり、血行動態に影響を与える場合もよくあります。不幸なケースだとこのスイスチーズ様のmVSDのために、二心室修復ができない場合もたまにあります。
弁に近い位置に開いているmVSDはinlet muscular VSDです。あまりこのように言う事はなく、ただmVSDと言いますが、図のような位置にあります。
図;mVSDとinlet VSDのエコーでの見え方
次にinlet VSDについてです。これは房室中隔欠損型とも言われ、三尖弁や僧帽弁に接しています。両方の弁の間に心室中隔が完全になく、弁がつながっているように見えるVSDがinlet VSDです。「線維性連続がある」とか「off settingがない」とか言われたりしますが、普通なら三尖弁と僧帽弁の弁の付け根は三尖弁が少し心尖部に近く、僧帽弁がより心尖部から遠くなります。このズレをoff settingとか言いますが、inlet VSDやAVSD(完全房室欠損症)のVSDではこの弁のズレがなく、両方の弁が同じ高さから出ているように見えます。これを線維性連続がある、とかoff-settingがない、とか言います。なので、図のように弁が心室中隔の同じところから出ているように見えるのが特徴になります。短軸の心室中隔では9時方向に欠損孔が認められます。これも診断の助けになるかもしれませんが、mVSDとinlet VSDは4chでよく見えるので4chでこの2つの診断をつけましょう!
短軸で見えるVSD(peri, muscular outlet, Ⅰ型VSD)
periとmuscular outletとⅠ型VSDの鑑別は短軸をずらした形でよく見えます。大動脈弁が中心に周囲に三尖弁、右室流出路、肺動脈弁が見えるviewです。図のような形です。この3つは原則、4chでは見えないので注意が必要です。
図:periとmuscular outlet とⅠ型VSDの心エコー図
3つの鑑別はわりと簡単です。三尖弁の付け根からVSDが開いているものがperi VSDです。三尖弁に接しているVSDと言ってもいいです。
肺動脈弁に接しているもの、肺動脈弁の付け根からVSDが開いているものはⅠ型VSDと言います。
肺動脈弁にも三尖弁にも接していないものがmuscular outlet VSDになります。この3つはこの短軸のviewで鑑別する事ができます。図を見ていただくと簡単に理解できるのではないでしょうか?ポイントは弁との間に心室中隔(お肉もしくは壁)が少しでもあるかないか、を見極める事です。似たような位置にある3つのVSDなのですが、しっかりわける必要があります。
Peri VSDのinletやoutletの見分け方
peri VSDを診断するのは短軸で三尖弁に接しているので、わりと簡単に診断できます。しかし、peri outletなのか、peri inletなのか、peri trabecularなのかの判断は難しいです。この判断をつけるためには、MPM(medial papillary muscule)の上(頭側)なのか、MPMの下(尾側)なのか?を判断しないと、peri outletなのか、peri inletなのかが判別できません。
これを判別するには、お腹から見上げて、図のようなviewを出さないとハッキリとはわかりません。三尖弁の乳頭筋の一番上(一番肺動脈弁に近い所)がMPMになります。心室中隔についている乳頭筋とVSDの位置関係を見てperi outletかperi inletかperi trabecularかを判別すればいいです。図を見ながら考えていきましょう。
図:periの見分け方
このviewはお腹から見上げないと出せなく、寝かせてエコーをしないとまず出せないviewだと思います。プローベを立てて、左右に微調整して図のような画像を出します。練習して出せるように頑張りましょう!
MPMの上(頭側)の方、肺動脈弁の方にVSDが開いていたらperi outlet VSDになります。
MPMの下(尾側)にVSDが開いていたらperi inlet VSDになります。(MPMの方がVSDより肺動脈弁側にある場合peri inlet)
VSDの中にMPMがある場合はperi trabecular VSDになります。(MPMの頭側、尾側、両側にVSDが広がる場合はperi trabecular VSD)
図を見たら簡単ですね。後は頑張ってこのviewを出すだけです!
まとめ
エコーでの見え方をまとめると
・4chではmVSDとinlet VSDが見える。弁に接しているのがinlet VSD。
・短軸ではperi, muscular outlet, Ⅰ型VSDが見える。
三尖弁と接しているVSD→peri、
肺動脈弁と接している→Ⅰ型VSD
三尖弁とも肺動脈弁とも接していない→muscular outlet VSD
・periはお腹から見上げて、MPMの位置とVSDの位置関係で判断。
MPMの上(頭側)(肺動脈弁側)にVSDがあるもの→peri outlet
MPMの下(尾側)にVSDがあるもの→peri inlet
VSDの中にMPMがあるもの→peri trabecular
こんな感じになります。
特にお腹から見上げてperiの鑑別をするのが大変だと思います。慣れがちょっと必要です。でもVSDは本当に見る機会が多く、ほとんどperiなので、重要だと思います。
長いことVSDについてだいぶ話しました。
どうでしょうか?これでVSDの位置、エコーでの診断の仕方はOKですか?これは一応僕が知っている方法であり、絶対的な方法ではないかもしれませんが、参考にしてみてください。
たかがVSDだと思っている人がたくさんいると思いますが、いろいろあって、実は難しい疾患と言うことが勉強すればするほどわかると思います。ちゃんとVSDを理解するには血行動態、右室の解剖、VSDの位置・大きさ、刺激伝導系について、手術について、とかなりたくさん勉強する必要があります。VSDの位置や刺激伝導系の話は多くの人にとってアレルギーがでるところなので、なるべく簡単にしました。それでもまあまあのボリュームがあります。以前にVSDの話をしたときには避けたところですが、これで、VSDの大体のところは話した事になるのではないかと思います。
では次回はまた他の疾患を話していきたいと思います。
まだ決めてません。