誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

DORV(両大血管右室起始症) その3 Taussig-Bingについて  〜疾患38

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Taussig Bingについて

Taussig-Bing Heaertについてはかなりわかりにくいですよね。僕もよくわかりません。じゃ書くなよ、って感じですが、一応わかる範囲で話をします。マニアックなのでよっぽど興味がある人だけこの記事は見ましょう。実はTaussig-Bing Heartには3つの意味があります。2つは疾患を詳細に示す「original Taussig Bing」と「false Taussig Bing」という呼び方と、3つ目は広い意味でのTaussig Bingという呼び方があります。

この広い意味でのTaussig-Bingというのは「肺動脈弁下にVSDが開いているDORV」の事を指します。いままで行った3つの病院ではこの「広い意味でのTaussig Bing」で話をしている人はいなかったと思いますので、あまり知らなくてもいいかもしれませんが、いろんな本とか読んでいるとこんがらがってしまうと思いますので、書いておきます。おそらく多くの病院ではDORV subpulmonary VSDとかDORV(false Taussig Bing)とか記載していると思うので、3つ目の「広い意味でのTaussig Bing」に関しては本を読んで混乱しないために一応書いておきます。3つのTaussig Bingがあることを理解してもらうと、Taussig Bingはより理解しやすいかと思いますが、区別するため必ず「original」や「false」とかの言葉を頭につけるようにしないとごっちゃになってしまいますので、必ずつけるようにしてください

まとめると

・Taussig Bing Heartには3つの意味があります。

・疾患名としての「original Taussig Bing」と「false Taussig Bing」

・広い意味で「肺動脈弁下にVSDが開いているDORV」を表すTaussig-Bing

・広い意味でのTaussig-Bingはあまり使わない。

ということです。まずこれがTaussig-Bingについての基礎知識になります。

ではTaussig-Bing Heartについて話をしていきます。

 

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図:Taussig Bing Heartについて

 

Taussig-Bing Heartの報告について

Taussig-Bing Heartというのは1949年にTaussigさんとBingさんが複雑な心奇形として発表したものです。詳しく言うと

  • Aoは完全にRVから出ている
  • 大動脈弁と肺動脈弁は接して、同時にVSDにも接する
  • 肺動脈はほぼ正常の位置
  • 肺動脈弁は心室中隔に乗り上げている(騎乗)
  • ConusはVSDの後ろめから体の前方に走る(僧帽弁のVIFから前方に連なる)
  • 心室肥大

などの特徴を持っている奇形として発表されました。上の特徴ではよくわからないかもしれませんが、前回の記事で書いているoriginal Taussig Bingの形態です。この時発表されたのは正確な詳細ではなく、「DORVで肺動脈の下にVSDが開いていてチアノーゼになる疾患」みたいな感じで発表されました。当時はCTとか今のようなエコー(エコーなんかはA modeができた頃、形態なんて全くわかりません)とかもないですので、形態を正確に把握するのは困難でした。連続性雑音がないことで「PDAがない」としている、とか言う記載もあるので今では信じられないような状態です。そのため、正確に詳細が発表されたわけではなかったのです。

完全にこの特徴が出そろったのはこの方の剖検の時なので、もともと発表された「original」のTaussig-Bing Heartである、original Taussig Bingの特徴がわかったのもっと後の事でした。しかし、詳細がわからなかったため、このoriginal Taussig Bingと違うDORVを間違えてTaussig-Bingとして報告する例が出てしまいました。

どういう疾患がTaussig-Bingとして報告されたかと言うと、DORVで肺動脈弁下にVSDが開いているTGA(完全大血管転位症)のような血行動態を示すような疾患がTaussig-Bingとして報告されてしまいました。前の記事にも載せています、「false Taussig Bing」がまさにこの間違えて報告されたTaussig Bingでした。Aoが前、PAが後ろのこのDORVも間違えてTaussig-Bingと報告されたため、間違っているよ、という意味で「false」が頭についてfalse Taussig-Bingと言われるようになりました。

歴史を考えると、広い意味でのTaussig-Bingがなぜ「肺動脈弁の下にVSDがあるDORV」を意味しているのかはよく分かるかと思います。広い意味でのTaussig-Bingはposterior TGAやfalse Taussig Bingなども含めて広い意味でのTaussig Bingと言えますが、おそらく今でもそのように呼んでいる人は少ないのではないかな、と思います。とても紛らわしい名前で申し訳ないですが、こういう経緯のもとについているのでしょうがない、と思ってください。

結論としては、みなさんにしっかり覚えてほしいのは「original Taussig Bing」と「false Taussig Bing」です。ただのTaussig Bingだけの場合では違う意味になるので、注意しましょう。ま、でもこういう経緯を一回知っておくとすんなり理解しやすいかもしれませんね。

 

こんなところでTaussig-Bingについてはいいでしょうか。本編の方に形態や治療法などについては記載しようと思いますので、ここでは記載しませんが、なぜこんなややこしい名前がついているか?というところがわかっていただけると幸いです。ではまた次回はDORVの方に戻っていきましょう。