すいません。だいぶ長い間書けていませんでした。とりあえず一通り疾患をやるまでは続けるつもりなので、不定期で申し訳ないですけど、続けていきますね。
前回のおさらいをすると、
TGAは「大動脈と肺動脈が逆にくっついている先天性心疾患」です。
そのため、静脈血が「全身から右房→右室→大動脈→全身→また右房」とめぐってしまい、全身に動脈血がいかないため、チアノーゼで困るという血行動態です。
ではどうしてあげたらいいかと言うと、大血管スイッチ術:ASO: (ちなみにこの時のASOはArterial switch operationの略で閉塞性動脈硬化症の略ではないです。。大人に慣れている人はパッと認識できないかもしれません。)(Jatene(ジャテーン、ジャテン)手術)をして大動脈と肺動脈を元に戻せばいいのですが、手術までは心房間を開けてmixingをして、全身に動脈血をなんとか送ってあげて持たせようという話で、心房間が開いてない人はBAS(心房中隔裂開術)をしましょう!というところまで話しました。
前回の話は簡単ですよね。
TGAの一生
わかりやすいようにTGAの一生を簡単に図表にしてみます。でも実はほとんど内容がなく新生児期の手術を乗り切れば、ほとんど何もない人もたくさんいらっしゃいます。術後の合併症、特に冠動脈だけはかなりの注意が必要です。ここらへんはまた説明します。
図:TGAの一生
ASO:大血管スイッチ手術
今日は大血管スイッチ手術について話していきます。
TGAが生まれ、BAS(心房中隔裂開術)を施行して数日で大血管スイッチ手術にいきます。大血管スイッチ手術:ASOは大体日齢5 -10くらいで施行する事が多いです。
結構早いです。なので生まれてすぐする手術のひとつになります。
手術の話なので外科の先生に話してもらったほうがいいのでしょうが、軽くわかればいいのですみませんが、僕が話していきます。
TGAは大動脈と肺動脈が逆にくっついているので、元に戻すのがJatene手術になります。簡単な話ですね。下図を見ながら考えていきましょう。言葉はいいので、手術をイメージできるように意識してください。
図;Jatene手術
具体的には
- 大動脈と肺動脈を切って付け替える。(大血管をスイッチする)
- 冠動脈(心臓を栄養する血管)は大動脈から出ないと困るので付け替える。(冠動脈移植)
1大血管のスイッチ
実はこの手術、やることはこの1,2だけです。ただし、大動脈と肺動脈を付け替える際に少しコツがあります。普通に肺動脈を前に持ってきて、大動脈を後ろに持ってくると捻れて、左肺動脈が狭窄してしまいます。これではいけないので大動脈が肺動脈をまたいで後ろにいくようにします。このようにつないであげる方法をLeCompte(ルコンっていいます)法といいます。
手術のところに、ASO(Jatene+LeCompte)と書いてあれば、大動脈と肺動脈をスイッチして、肺動脈をまたいで、つないであげた、と認識すればいいのです。
いろんな本に絵とかがついているので、見てイメージできるようにしましょう!
図:LeCompte法
2冠動脈移植
冠動脈移植は大動脈をスイッチするので、必ず必要になります。言葉で移植と言うのは簡単ですが、新生児の1mmくらいしかない冠動脈をキレイに移植するのは大変です。心臓血管外科の先生は冠動脈が狭窄しないように様々な工夫を施しているのです。
まず何も知らない人が冠動脈を移植してください、と言われたらどうするでしょうか?大動脈の根本で切ってつなごうとすると思います。しかし、1mmの冠動脈を吻合するのは不可能ですし、吻合したところから狭窄してしまいますので、実際にはこの方法では吻合できません。
図:冠動脈の吻合
どうするかと言うと、冠動脈がくっついている壁ごと、ボタンのようにしてくり抜いてしまいます。知ってしまったら当たり前ですけど、はじめて知った時はなるほど、と思いました。その他、冠動脈を移植するときになるべく捻れたりしなように、トラップドア法というやり方や高位吻合(図を参照)など僕ら内科にはわからないいろいろな工夫があります。こんな感じで冠動脈を移植しています。詳しく知りたければ外科の先生に聞いてみましょう。
今回はJatene手術について説明しました。
正直絵を描くのに結構苦労しましたが、わかりやすいかはちょっと自信ありません。しかも、看護師さんにこの知識が必要なのかもよくわかりませんが、手術の方法がわかると今後説明する、「術後気をつけること」が理解しやすくなるため、説明しました。
次回は冠動脈の分類、術後の合併症などを説明していきます。