前回はASDの血行動態について話しました。
簡単に言うと、
ASDはどんな大きな孔でも、RAとLAの圧の差がほとんどないため、大したhigh flowにはならず、しんどくなりません。
しかし、長年孔が開いている事によって、RAやRVに負担がかかり、おじさん、おばさんくらいになってくると不整脈で困るようになります。
これを防ぐため、成人するくらいまでに治療をすることをおすすめする、というお話でした。
ASDの治療について
今回はASDの治療について説明します。
治療には現在2種類の選択肢があります。手術とカテーテル治療です。
まず手術について話していきます。
ASDの手術もVSDと同じで心臓を止めて手術をしないといけません。
VSDと同じような感じで考えていただければいいかな、と思います。
手術での選択肢は主に3つになります。
・正中切開で輸血ありの手術。2-3kg以上で可能。
・正中切開で無輸血手術。1歳10kg以上が目安。
・側開胸手術。15kg以上が目安。
図:ASDの手術
こんな感じになります。
前回話したように、ASDでしんどくなる事はほぼほぼないため、輸血ありで開心術に行くことはあまりないかと思います。なので、多少high flowでもPHがなければ、最低でも体重の増加を待って無輸血手術に持っていきたい、と考えます。
大抵の場合は手術を急ぐ必要はないため、特に女の子の場合は(差別はいけませんが、傷を気にする親御さんや患児の女の子が圧倒的に多いです。)傷の事を考えると側開胸手術かカテーテル治療がいいのではないかと考えます。側開胸手術は側弯になりやすい、胸のひきつれがある、という話もあり、外科医と必ず相談し可能かどうかの検討が必要かと思います。
ということで手術に関しては、しんどくない限り最低、無輸血手術できる、1歳10kgまで待って手術を、傷を考慮するならば、側開胸やカテーテル治療を選択するという方向がいいのではないかと思います。
カテーテル治療について
カテーテル治療は2005年より日本ではじまり今ではたくさん施行されています。これは図のような金具をASDに留置してASDを閉じてしまう治療です。Youtubeに留置するイメージ動画がありますので、全然イメージできない方はこれを見てください。これを読むよりよく分かると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=gEj0_jRvmv8
Amplatzer septal occluderなどで検索しても色々でてきます。
図:カテーテル治療
カテーテル治療には大きなメリットが2つあります。それは
・心臓を止めずに治療できる。
・傷がない。
手術と違い、心臓を止めて胸を開ける必要がないので、4,5日の入院で楽に治療ができ、また傷も足に少し大きな点滴を指すくらいの傷で終わるので、ほぼ傷はないと言っていいです。これは大きなメリットで、カテーテル治療を選択する患者さんが多いのもうなずける話です。
しかし、カテーテル治療にはできる人とできない人がいます。
まず金属アレルギーがある人はできません。
また体重は最低でも16kg以上は必要です。できればもう少し大きくなって体格に余裕ができてからするのがよいかと思われます。できたら、小学生から中学生の間くらいの体格はほしいかな、というところです。
そして、ASDの孔の位置によってはカテーテル治療が難しい事があります。
カテーテル治療では図のようなDiscで心房中隔の壁を挟むため、「ハサミしろ」が必要になってきます。この「ハサミしろ」をrim(リム)といいます。
ASDに十分なrimがないとDiscでしっかり挟み込めないため、Device(閉鎖する金属)が落ちてしまう可能性があり、治療が難しいです。
このためrimがないようなASDの場合はカテーテル治療をしたくても難しいのです。位置によってカテーテル治療ができないのはこのためです。
現在日本で行われているASDのカテーテル治療に使用されるDevice(閉鎖する金属:閉鎖栓)は2種類あります。
Amplatzer Septal Occluder(ASOと略されます。アンプラッツァーといいます)
Occlutech Figulla Flex Ⅱ ASD Occluder(Figulla Flex Ⅱ、FigullaとかFSOと略したりします)
この2種類のDeviceがあります。(図を参照)ASDの欠損孔の周囲の構造を考えて最適な方を選択して留置しています。2つのDeviceの違いはASOが硬め、FSOが柔らかめ、くらいで認識してもらえたらいいかな、と思います。「どうしてこっちを選んだんですか?」とか質問すると喜んで医師は教えてくれると思いますよ。
ということで今回はASDの治療についてでした。
何も考えなければ、「ああ、ASDの手術ね」とか「またカテ治療の入院か」と思うだけで流れてしまいますが、前回と今回話したような背景があり、治療を選択しているのです。
では次はTOF、ファロー四徴症について話していきます。