low flowは肺血流が少ない疾患です。
肺血流が少なすぎると、酸素濃度が低下して困ります。
前回は肺血流が少ない疾患は
・肺動脈が狭い+逃げ道がある疾患
・肺動脈が閉鎖している疾患
このような疾患があるというような話をしました。
今回はこんな疾患の治療について考えていこうと思います。
ではlow flowになったら、どうすればいいでしょう!
前回も話しましたが、肺につながる道は2つしかありません。
1つは肺動脈、もう1つは動脈管です。
動脈管はいずれなくなる運命なので、基本的に肺血流を考える時は肺動脈を考えるといいです。
上記のような、肺動脈狭窄(+逃げ道あり)、肺動脈閉鎖の疾患ではlow flowになってしまいますので、なんでもいいので、肺血流を増やさないといけません。
方法としては以下のものがあります。
動脈管を開けておく
肺動脈がダメなら、動脈管(PDA)から血液を肺に流してやればいいのです。
PDAはほっとけば、2-3日で勝手に閉鎖してしまう血管です。
そこで、お薬で無理矢理動脈管(PDA)を開けておけばいいのです。
→プロスタグランジン製剤を使用!(PEG1とかLipoPGE1とか)
図:PDAを開けておく
図のように「肺動脈がしょぼい」とか「肺動脈がない」と思った瞬間に
「プロスタグランジン製剤の投与」
とバカのひとつ覚えのように考えていればOKという事になります。
とりあえず、これで一旦は窮地をしのげるのです。
しかし、動脈管は勝手に閉じてしまうような血管なので、
動脈管を開けておくには、ずっと点滴でプロスタグランジン製剤を流しておかなければなりません。
しかし、それでは退院できませんので、お家に帰れるように手術をしてやる必要があります。それがBTシャント手術です。
BT shunt手術をしてあげる
BT shunt手術は下記の図のように、大動脈の枝である、鎖骨下動脈から肺動脈に血管をつなぎ、なんでもいいので、肺血流を増やしてあげる手術になります。
こういう根本的な解決にはならないけれど、一旦なんとかするような手術を
姑息術といいます。BT shuntは代表的な姑息術なのです。
図:BT shunt手術
「主肺動脈を作ってあげれば、いいじゃん」っていう素朴な疑問もあるかと思いますが、体重が小さい時に右室流出路(主肺動脈のあたりの事)を形成するのは成績が良くないのです。
(図のところにもごちゃごちゃと小さい字で書いてますが、0歳から1歳で3倍も体重が増えるので、導管をつけると、すぐにサイズアウトしてしまいます。(こども服と一緒です。)TOFでは一期的にした時期もありましたが、成績がよくありませんでした。小さいので、難しいのもあるかと思いますが。)
なので、最低でも6kgくらい、できれば、10kgくらいの大きさになってから、右室流出路を作るようにしています。
という事で、low flowで困ったら、
とりあえずPDAをプロスタグランジン製剤で開けておいて、BT shunt手術を心臓血管外科の先生にお願いしましょう。
今回はこんなところになります。
しかし、単純にPDAをプロスタグランジンで開けておくと、たまに困ったことになる事もあるので、次回はそんな話をしていこうかと思います。