誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

Low flow(肺血流が減少する疾患)について考えよう 基本9

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Low flowについて話す前に少し知っておかなければいけない事項があります。

それは

動脈管(patent ductus arteriosus; PDAやDAと略します)」

についてです。

極端な事を言えば、肺につながる血管は

「肺動脈と動脈管の2つだけ」です。

なので、肺血流について知りたければ、

この2つについてはよく知っておく必要があるのです。

 

PDA(動脈管)について

動脈管(PDA)は新生児特有の管です。

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいたときに必要だった管ですが、

生まれたら必要なくなるので、生後2-3日で自然に閉鎖していきます。

 

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動脈管

図:PDA

 

この動脈管は肺動脈と下行大動脈をつなぐ管です。

ほっとくと自然になくなってしまう管ですが、

しばしば肺血流が少なくなる疾患では、この管を開けておく必要が生じるのです。(その他にもPDAを開けておかないといけない疾患もたくさんあります。一旦その事はおいておいて話をします。)

なので、PDAは先天性心疾患にとって、とても重要な意味を持つ管になります。

出生直後はこのPDAをどう扱うかが重要なポイントとなりますので、

PDA(動脈管)は覚えておいてください。

 

肺動脈について

肺に血液を送るため、肺動脈があります。

通常は右心室から出て、左右に分かれて右と左の肺に血液を送ります。

これが肺動脈です。

 

はじめにも言いましたが、

基本的に肺につながる道は2つしかありません。

1つは「肺動脈(PA:pulmonary artery)」、

もう1つは「動脈管(PDA: patent ductus arteriosus)」の2つです。

治療を考える上では動脈管は非常に大事です。

生まれてすぐに閉鎖する管ですが、

先天性心疾患では非常に存在感のある管になります。

しかし、ここでは一旦おいておいてください。

動脈管はいずれなくなる運命なので、最終的に肺に血液を送る血管は

「肺動脈」だけです

つまり、肺血流を考える時は「肺動脈」を考えてやればOKです。

 

Low flowを考える手順

次の手順で考えてください。

(下記の絵を診てもらったほうがわかりやすいです。)

 

1.まず、肺動脈がつながっている心室をチェックします。(右心室の事が多いが、先天性心疾患では左心室の事も多いです。)

2.その心室の出口が肺動脈以外にないか、チェックします。

肺動脈以外に出口がなければ、low flowにはならないので大丈夫です。

肺動脈以外に出口がある場合だけlow flowになる可能性があります。

例えば、Fallot四徴症のように右心室の出口が肺動脈とVSDがある場合は肺動脈が狭いと、血液はVSDの方に逃げてしまい、肺に行く血液が少なくなってしまいます。こうしてlow flowになってしまいます。

3.肺動脈以外に出口がある場合+肺動脈が狭い(弁に狭窄がある、もしくは流出路に狭窄がある、もしくは末梢の血管に狭窄があるetc…)時は

low flow になります!

4.肺動脈が閉鎖しているやつは、動脈管が閉じればlow flow になります。

 

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low flowの説明

:図: low flowの説明

 

言葉で説明すると難しいですが、絵を見てもらうと簡単な事ではないかと思います。4の肺動脈閉鎖は絵にしなくてもわかりますよね。

という事で、まとめると

・肺動脈が狭い+逃げ道がある →low flow

・肺動脈が閉鎖 →動脈管が閉じれば low flow

となります。

 

Low flowになると肺血流が少ないので、酸素濃度が低くなってしまいます。

前回も話ましたが、ある程度なら体はむしろ楽なので、いいのですが、

あまりにも酸素濃度が低くなると困ります。

(SpO2:75%以下は低くて困ります。)

なので、肺血流を増やすために治療をしないといけません。

 

次回はlow flowの時に肺血流を増やす治療を考えていこうと思います。