先天性心疾患を診たときにはまず、
「肺に流れる血液の量を考えよう」という話をしました。
これまでは肺に流れる血液が多い状態について話をしてきました。
肺に流れる血液と全身に流れる血液の量が同じなのは、普通の心臓や心内修復術後の心臓です。
では、肺に流れる血液が少ない疾患はどうでしょうか?
これから「肺に流れる血液が少ない=low flow」
について考えていこうと思います。
Follot四徴症(TOF: Tetralogy of Fallot)を例に考えよう
具体的にFallot四徴症を例に考えていきましょう。
Fallot四徴症は4つの特徴がありますが、
肺動脈が狭い事だけに注目してみましょう。
図:Fallot四徴症の血行動態
Fallot四徴症は肺動脈が狭いので、
全身から血液が10返ってきても、肺動脈は狭いので10の血液を肺に流すことができません。
図のように5肺に流し、5は心室中隔欠損症を通して
左心室→大動脈へと流れてしまいます。
すると肺には5の血液が、全身には15の血液が、流れていきます。
全身に比べて、肺に流れる血液は少ないですね。
この状態がlow flowの状態です。
Low flowになるとどうなるの?
High flow(ハイフロー)とよく臨床の現場で使う言葉ですが、low flowとはあまり使わないような気がします。
その事を一応覚えておいてください。
肺血流が少なくなるという事はどういう事で困るのでしょうか?
それは肺に流れる血液が少ないので、酸素化される血液が少なくなります。
すると、全身のSpO2は低くなってしまいます。
「全身の酸素飽和度が減ってしんどい」
というイメージをお持ちの人が多いと思いますが、
肺血流が少なくなるとSpO2は低くなりますが、実は体は楽なのです。
(めちゃくちゃ低いと低酸素で動けなくなりますが、ある程度であれば楽です。)
赤ちゃんはお腹の中でSpO2:80%くらいで生きてきたので、
SpO2:80%くらいでも低酸素によるしんどさはないです。
むしろ呼吸は楽なので、体重は良く増えたりするのです。
(low flowの代表的な疾患である、Fallot四徴症の子はぶくぶく太っている事が多いです。)
なので、肺血流が少ないlow flowの疾患は
・SpO2は低い。でもしんどくない。
・呼吸は楽で、良く体重が増える。
と認識してもらえば、いいかと思います。
なので、問題は
「肺血流が少ないために、酸素濃度が低すぎになってしまう事」
くらいになります。
なので、治療としては、肺血流を増やす方法を考えてあげればいいのです。
次回はlow flowの血行動態と治療を絡めて考えていこうと思います。