誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

Qp/Qs(肺体血流比)を計算しよう! 基本6

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Qp/Qsの計算について

教科書とかに書いてあるので、そこを読んでいただけるといいかと思いますが、

なるべくわかるように説明していきます。

 

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Qp/Qsの式

図;Qp/Qsの式について( * 13.6は本当は1.36×10です。)

 

式を見ただけでうんざりした人は多いと思います。

まず「Qs=体血流量」の式を理解することにしましょう。

Qp=肺血流量の理論も一緒です。

イメージしてもらうことがこの式を理解する早道になると思います。

では、算数のりんごとトラックの問題 で考えてみましょう。

 

りんごを運んだトラックの台数は?

東京で「りんごを1日800個消費」するとします。

青森から東京を経由して大阪にりんごをトラックで運ぶとしましょう。

わかっているのは、「青森と大阪のトラック1台のりんごの個数」です。

青森のトラック1台のりんごの個数=100個、

大阪のトラック1台のりんごの個数=60個、

ではこのりんごを運ぶのにトラックは何台必要になったでしょう?

という算数の問題と同じです。

 

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りんごとトラックの問題

図:りんごとトラックの問題

 

りんごの問題の答え

東京に800個必要で、トラック1台につき、40個(はじめは青森で100個だったので、大阪についたら60個になっているので、40個東京においてきたのがわかります。)しか運べないので、トラックは800÷40=20で20台必要になったことがわかります。

  → つまり 答えは 20台 です。

 

これは大丈夫ですか?

同じように体血流量の式を考えると

「東京でりんごを1日800個消費する」=酸素消費量

「青森でのトラック1台のりんごの個数」=動脈の酸素飽和度(SaO2)

「大阪でのトラック1台のりんごの個数」=静脈の酸素飽和度(SvO2)

「必要になったトラックの台数」=体血流量

と考えてください。

ちなみにトラックは酸素を運ぶHb(ヘモグロビン)にあたります。

 

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りんごとQsの比較

図:りんごとQsの比較

 

なので、このトラックの台数に当たるのが、体血流量になります。

ちょっと考えるとわかりますが、大阪でのりんごの数が多いと(例えば80個)

トラックをたくさん使用したことがわかります。(800を100-80=20で割った数なので、40台になります。)

実際の式はこのトラックの式より少し複雑で、

酸素を運ぶのはHbです。Hbの酸素運搬能の1.36なので、1.36とHbの数と

酸素飽和度にかけたものが、血液中の酸素の量になります。

なので、Hbが13g/dlで、動脈の酸素飽和度が99%なら、

1.36×10×13×0.99=175.032 となるわけです。

(Hbの単位がg/dlなので、単位をあわせるため、10をかけます。最初の式では省略していますので13.6にしています。)

また酸素消費量は体格と心拍数で決まった値があるので、それを使っています。

おおよそでいいなら、150×体表面積(m2)で大体の値がわかります。

これを使って計算しています。

 

この理論で考えると、普通の人は動脈は大体100%なので、体血流量が多い人は静脈血の酸素飽和度が高い事になります。

逆に体に血液が全然流れていない人は静脈血の酸素飽和度は低くなります。

静脈血の酸素飽和度で体にどれだけ血液が流れているか(=心臓の駆出量)を予想することもできるのです。

 

肺血流量=Qpは?

これがわかれば肺血流量も同じ理論ですが、肺の場合は酸素をもらう側なので、

ちょっとニュアンス違いますが、大体同じ考え方です。

問題を少し下記のように変えると

東京で輸入したりんごを、大阪から青森に運びます。東京に1日800個輸入されてきます。わかっているのは大阪と青森でのトラック1台分のりんごの数です。大阪のトラックは1台60個、青森のトラックは1台100個のりんごが載っています。何台トラックが必要になったでしょう?

 

答えはさっきの問題と全く一緒です。

肺血流量=Qpは下記のように当てはめれます。

「東京でりんごを1日800個輸入する」=酸素消費量

「青森でのトラック1台のりんごの個数」=肺静脈の酸素飽和度

「大阪でのトラック1台のりんごの個数」=肺動脈の酸素飽和度

「必要になったトラックの台数」=肺血流量

このように同じように計算する事ができます。

 

こうして求めた体血流量と肺血流量でQp/Qsが求まります。

肺血流量を体血流量で割ってあげればいいのです。

なので式は下記の酸素飽和度で求められます。

 

Qp/Qs=動脈血-静脈血 / 肺静脈-肺動脈

 

でもこの式を覚えるより、Qsの式を理解し、QpをQsで割る、と考えれたら

より本質に近いのでいいと思います。

どうでしょうか?

このりんごの例えでわかっていただけたでしょうか?

わかりやすいかどうかは自信ありませんが、教科書よりかは概念が理解しやすいのではないでしょうか?

こんな感じでQp/Qsは求めているのです。

 

この式の部分は難しければ、飛ばしてもいいと思います。

ただし、

「Qp/Qs=肺体血流比を表していて、high flowの程度を表している。」

という事は覚えておいてください。

 

High flowについて長きにわたって話してきましたが、なんとなく理解しましたか?

以下まとめです。

  • 心臓がどんな形かわかったら、肺に流れる血液が多いか、少ないかを考える。
  • 肺に流れる血液が多ければ(high flow)、しんどくなる。
  • 肺に流れる血液が多い場合、その程度を考えよう。

      → その程度は「孔の大きさ」と「圧の差」で決まる!

  • 大動脈弁は新生児で6ミリ、なので孔が6ミリ以上のやつは大きいと考えてOK
  • 新生児は肺の血圧が高く、1ヶ月になるにつれて下がってくる。

               → 1ヶ月にになるにつれ、high flowの程度は強くなる!

  • Qp/Qsは「肺血流は体に流れる血液の何倍か?」を示してます。

     これが1以上であれば、肺血流は増えていることになります。

 

という感じになります。

次回はhigh flowの臨床症状を簡単に紹介します。