誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

不整脈:房室ブロック(AVB)について その1:CAVB(完全房室ブロック) 〜基本31〜

前回は洞不全症候群(SSS)について話しました。洞結節やその周辺を傷つけてなる徐脈でしたね。原因は多くは手術時のSVCの切断や心房操作などsinus node arteryや刺激伝導路を傷つける事が原因でしたね。よく起こる手術としては、FontanやGlenn手術、TAPVCやAS…

不整脈:徐脈:洞不全症候群(SSS)について 〜基本30〜

もともと不整脈の大枠について、と今回のSSSの記事は一緒に書いていましたが、ちょっと分けたほうがわかりやすいと思い、わけて書いています。前回の記事で不整脈の大体の全容を掴んでもらった方が、ここからの話もわかりやすくなります。一応、僕が勝手に不…

不整脈:不整脈の大枠ついて 〜基本29〜

不整脈ってどんなものがあるか思い浮かびますか?国家試験でも出てるし、舐めんなよって思ったかもしれませんが、ここはスワヒリ語の如く不整脈が苦手な人が来ているはずなので、不整脈の大枠から話していきます。細かい事言うと余計わからなくなりますので…

不整脈:心拍数の数え方ついて 〜基本28〜

長い間おやすみしていて申し訳ありません。なかなか不整脈の記事を書くのが難しくて難航していました。前の記事の心電図とwide QRSについての話は大丈夫でしょうか?簡単に復習すると、 ・心電図はⅡ誘導だけ見よう! ・前の心電図と比べよう。 ・刺激伝導系(…

不整脈:wide QRS、右脚ブロック(RBBB)、左脚ブロック(LBBB)について 〜基本27〜

wideQRSは1回でやるつもりでしたが、なかなか長くなってしまったので、今回はwide QRSの続きをします。wide QRSになるものとしては以下のものがありました。 ・心室性の不整脈が出た時。 ・ペースメーカーで心室をペーシングした時。 ・WPW症候群で副伝導路…

不整脈:wide QRSついて 〜基本26〜

前回で心電図について話をしました。 ・心電図はまずⅡ誘導を見て、後の誘導は前の心電図と比べる。 ・1心拍は「P波⇢QRS波⇢T波」で構成される。 ・洞結節(sinus)から心房に電気が伝わり心房が収縮:P波 ・心房の血液が心室に充満するまで房室結節でタメを作…

不整脈:心電図について 〜基本25〜

今日からはみんな大好き、不整脈について話をしていこうと思います。はじめに断っておくと、僕も不整脈は苦手です。あまり得意ではありません。なので、不整脈を専門にされている先生はこのブログを見ないようにしていただきたいな、と思います。怒られそう…

high flowは大事!今一度理解しよう  番外編1

たまーにくるコメントは返事してませんが、一応ちゃんと読んでいます。今回は下記の様な質問があり、大事な話なのでしておこうと思い書きます。質問はこんな感じでした。 「凄く初歩的な質問で申し訳ありません。看護師です。 三尖弁閉鎖でsat70くらいの子が…

小児の心臓カテーテル検査について:造影と圧を疾患と絡めて その2 ~基本24~

疾患別にカテーテル検査のポイントについて羅列しています。長いので、2つにわけて説明しています。今回は前回の続きで、PA/IVS、BDG術前、Fontan術前・術後、TOF術後やRastelli術後などをやっていきます。ということで、どんどんやっていきましょう! PA/I…

小児の心臓カテーテル検査について:造影と圧を疾患と絡めて その1 ~基本23~

造影の検査について前回は話をしました。圧の説明や造影について話をしましたが、あまりそれだけではピンと来ない事が多いのではないでしょうか?実際のところは疾患毎にポイントがあって、どこを押さえないといけないかが、違います。ある疾患では非常に重…

目次

4月と言うことで目次を作りました。このブログはただブログで、いけているトップにすることができません。どこに何の記事があるのかが、わかりにくいブログで申し訳ないな、とも思っているのですが、たまにこうやって目次を作りますので、勘弁してください。…

小児のカテーテル検査について〜造影〜 その3 基本22

以前、カテーテル検査のポイントは3つで、「圧と酸素濃度、造影、治療」、と話したかと思います。もうこれは適当に僕が作ったので、自分の病院では言わないようにしてくださいね。話す順番があるといいかな、と思って言ってるだけなので。 ということで、今…

小児のカテーテル検査について〜症例で考えよう〜 その2 基本21

前回の話は理解できましたか?かなり長い話で、計算とかいろいろあって眠くなった人も多かったのではないでしょうか?今回は症例を例に挙げてカテーテル検査の見方を説明していこうと思います。 前回の復習を簡単にしましょう。 ・まず病歴、疾患を理解する…

小児のカテーテル検査について〜圧と酸素濃度〜 その1 基本20

ずいぶん長い事更新しておらず申し訳ありませんでした。なかなか筆が進まず、長い事更新できませんでした。このブログも思ったより多くの人が見てくれていてありがたいと思っています。頑張って続けていきますね。しかし、今回の記事は果たしてわかりやすい…

総肺静脈還流異常(TAPVC, TAPVR)について PVO:(PVS肺静脈狭窄)について 疾患35

前回はTAPVCの経過と手術などを書きました。前回もちょいちょい出てきましたが、今回はPVOについて書きます。術後にPVOが認められるとかなり予後が悪くなってしまいます。なので、TAPVCではPVOについてしっかりわかっておいたほうがいいかな、と思います。 …

総肺静脈還流異常(TAPVC, TAPVR)について 出生時の診断と手術について 疾患34

前回からTAPVCをやっていますが、前回の内容は大丈夫でしょうか?今回はTAPVCの経過と手術についてやっていきます。 TAPVCが生まれるまで 最近の先天性心疾患はかなりの頻度で胎児エコーでわかるようになってきています。単心室などは4chをパッと見ただけで…

心室中隔欠損+大動脈縮窄+大動脈弁(もしくは弁下)狭窄の複合疾患について Ross手術について   疾患32

前回はCoA complexの治療のボーダーラインについて話しました。今までの話をまとめてみると… CoA:大動脈縮窄は単独で認める場合もあるけど、2/3と半数以上はVSDなどの複合疾患として認められます。中でもVSD+AS(or SAS)+CoAという組み合わせが多く、AS( ro…

心室中隔欠損+大動脈縮窄+大動脈弁(もしくは弁下)狭窄の複合疾患について CoA complexの治療のボーダーラインについて   疾患31

前回はCoA complexの治療について説明しました。ポイントはASやSASの有無で治療方針が分かれる、という話でした。 ASやSASがなければ、VSD閉鎖+Arch repairでOKです。以後再手術する事はありません。 ASやSASがあれば、Yasui手術です。Yasui手術は「DKS+Ra…

心室中隔欠損+大動脈縮窄+大動脈弁(もしくは弁下)狭窄の複合疾患について DKS吻合とYasui手術:CoA complexの治療等について  疾患30

前回は重要な項目でしたが、理解できましたか?CoA complex(CoAとその複合疾患:具体的にはVSD+AS ro SAS+CoA)の成り立ちは、円錐中隔(conus setpem)の後方偏位によってできていましたね。conusが後方偏位することにより心室中隔にギャップが現れVSDができ、…

心室中隔欠損+大動脈縮窄+大動脈弁(もしくは弁下)狭窄の複合疾患について CoA complex(大動脈縮窄複合)  CoA complexについて  疾患29

前回はCoA単独について説明しました。簡単に復習するとCoAとは大動脈弓が狭窄する疾患でした。CoAのできる原因には2つあり、①大動脈に血流が少なく十分育たなかった②PDA組織が大動脈に迷入し出生後PDAの狭窄とともにCoAができた、という2つの原因が考えられ…

心室中隔欠損+大動脈縮窄+大動脈弁(もしくは弁下)狭窄の複合疾患について CoA complex(大動脈縮窄複合)  今回はCoAについて  疾患28

今回は心室中隔欠損+大動脈縮窄+大動脈弁(もしくは弁下)狭窄の複合疾患について話していこうと思います。 面倒くさいので、略語を使用していきたいと思います。心室中隔欠損(VSD)+大動脈縮窄(CoA)+大動脈弁(もしくは弁下)狭窄(ASもしくはSAS)と略し…

総動脈幹症(Persistent truncus arteriosus)について Rastelli手術について 疾患27

前回はTruncusの血行動態と出生から心内修復術までのところをざっと説明しました。その中でRastelli手術がでてきたと思いますが、この手術は重要なので、ここで一回ちゃんと取り上げようと思います。 もともとはTGAのⅢ型(AoとPAが普通の逆についていて、VSD…

総動脈幹症(Persistent truncus arteriosus)について Truncusの血行動態high flowから心内修復術へ 疾患26

前回のTruncusの成り立ちはOKですか? Truncusの形は単純です。 大動脈と肺動脈が合体していて、大動脈弁が4尖弁で逆流が多くて困ることが多く、VSDが大きく開いており、大体二心室修復できる疾患です。 でもそれではなかなか頭に入りにくいので、前回はどう…

総動脈幹症(Persistent truncus arteriosus)について Truncusの成り立ち 疾患25

今回は総動脈幹症について話していきます。 特になんで総動脈幹症にしたかと言うと、以前お話したTOFとちょっと繋がりがあるからです。(読んでいけばわかります。) この総動脈幹症はあまりよく見る疾患ではないかもしれません。総動脈幹症は英語では「pers…

心室中隔欠損症(VSD)の孔の位置について その3〜小児循環器医に必要な知識 VSDはエコーでどう見えるか?  疾患24

では前回と前々回の内容を把握してない人はまずそこをマスターしてから見てください。今回はVSDが実際エコーではどう見えるか?を説明していきます。 まずエコーというのは2Dなので、一つの断面した見えません。心臓は立体的なものなので、一度に右心室全部…

心室中隔欠損症(VSD)の孔の位置について〜小児循環器医に必要な知識 VSDの位置について その2 疾患23

前回はVSDの位置について説明しました。Muscular VSDとⅠ型VSDについて話しました。 ・弁に接していないVSDはmuscular VSD(mVSD)と呼びます。 ・mVSDは位置により以下の3つにわけます。(呼び方も記載します。) ・Outletに近いところはmuscular outlet ・in…

心室中隔欠損症(VSD)の孔の位置について〜小児循環器医に必要な知識 VSDの位置について その1 疾患22

今回はいよいよVSDの位置について説明していきます。 前回の右室の解剖がわからない人はついていけないと思いますので、前回の記事をまず理解した上で読んでください。 VSDの位置の呼び方はいろんな「あだ名」みたいなものがあります。全国でも統一されてい…

心室中隔欠損症(VSD)の孔の位置について〜看護師より小児循環器医に必要な知識 右室の解剖から 疾患21

今回新しい疾患をしようと思っていましたがVSDの講義をすることがあり、VSDの孔の位置についてスライドを作ったので、これを載せようと思います。 正直この内容はかなり難しく、看護師さんには必要でないかもしれません。知っていれば尚いいですが、小児循環…

左心低形成症候群(HLHS)ではなくてHLHC!〜HLHSの親戚?HLHC(hypoplastic left heart complex)について。 疾患20

今回はHLHCについて説明していきます。 あまり看護師さんには関係のない話かもしれませんが、こういう事で小児循環器医が悩んでいる、と言うことを知っておいたら、と思いお話します。関係ないとは言いましたが、疾患を理解する上では一段レベルが上がると思…

左心低形成症候群(HLHS)〜Norwood手術 疾患19

今回はNorwood手術について説明していきます。 前回はHLHSの血行動態について説明していきました。HLHSに限らず、単心室ではよくある血行動態なので、考え方の基本になるのではないかと思います。RVから肺動脈と全身の両方を還流している疾患になります。そ…